金星の太陽面通過…の反対

金星の太陽面通過が近づいて来ましたが、ふと疑問に思いました。内合の時の太陽面通過はかなりレアな現象ですけど、じゃ、外合の時はどうなんだろう?


金星の内合


金星の外合

内合の時は、地球・金星・太陽の順に並びますが、これが地球・太陽・金星の順に並ぶのが外合です。金星が太陽の向こう側に回り込むわけです。当然、「金星が太陽に隠される」事もあるだろう、と思ったわけです。もちろん、太陽が明るすぎて見える現象ではありません。こういう時こそ天文ソフトの出番です。


…というわけで、今日はほぼ一日中、パソコンの画面とにらめっこでした。で、調べたんですけど、予想通り、太陽面通過よりは頻度が高いです。それほどレアな現象でもありませんでした。でも、なかなか面白い事がわかりました。


金星の太陽背後通過は、やはり昇交点及び降交点付近で起こります。6月と12月のシリーズがあり、近い過去及び未来の現象の日付は次のとおりです。(パソコンの画面を見ながら日付をメモする、という至ってアナログな方式で記録しました。1日〜数日のエラーがあるかもしれません。)


外合付近。背後通過を見るため、太陽は輪郭表示にしてあります。こんな感じで紀元後すぐから始めました。(実に気の長い話です…w)

アニメーションに使った数値です。


地球と金星の会合周期

  • 583.92日。583日22時間です。

この5倍がほぼ8年になります。

  • 会合周期の5倍=2919日14時間50分 (約8年)

しかし、正確に8年ではないので、少しずつずれていきます。243年たつとほぼ同じ条件がめぐってきます。

  • 243年

さて、ソフトのアニメーション表示の間隔を583日22時間にして、表示させてみます。5つの群がある、という事は、5本のシリーズがあるわけです。ほら、5回めは(8年たつと)もとの場所に戻ってくるでしょ?でも少しずつずれてくるんです。


背後通過を起こす年月日から開始すると、こんな感じになります。


3000年ほど(!)シミュレーションしたら、きれいなループになりました。これだけでも十分楽しいです。

これ1枚描くのに何時間かかったんだろう…(笑)。


さて、これらのシミュレーションで見つけた近年の「金星の太陽背後通過」は、次のとおりです。

12月の外合

年月日 備考 
1838.12.19 背後通過にならない
1846.12.15  
1854.12.13  
1862.12.11  
1870.12.08  
1878.12.05  
1886.12.03  
1894.11.30  
1902.11.29  
1910.11.26 背後通過にならない

次のシリーズは、
2081.12.19 - 2145.11.30。この間に 9回あります。

6月の外合

年月日 備考 
1968.6.20 背後通過にならない
1976.06.18  
1984.06.15  
1992.06.13  
2000.06.11  
2008.06.09  
2016.06.06  
2024.06.04  
2032.06.02  
2040.05.30  
2048.05.28  
2056.05.27 背後通過にならない

次のシリーズは、
2219.06.21 - 2291.06.01。この間に 10回あります。


21世紀初頭の2回の現象、始まりと終わりは次のとおりです。この現象、金星までの距離が遠いため、見かけの動きが遅く、さらに太陽の真ん中付近(の裏側)を通るため、金星が太陽に隠れてから出てくるまで、丸2日近くもかかります。

第一接触 第四接触
2008.06.08 14h00m 2008.06.10 11h19m
2016.06.06 07h52m 2016.06.08 06h00m


2016年6月6日〜8日、金星の太陽背後通過。毎日09時の金星の位置です。

この時の金星は-3.9等。コロナ観測用望遠鏡で見えるかもしれません。


こういう現象があると、金星からの「波動」(笑)が地球に届かなくなりますので、きっと何か影響があるに違いありません(爆)。でもオカルト屋さんも占い屋さんも2008年に何も言わなかったような気がするなぁ…。とりあえず次の2016年を楽しみにする事にします。果たしてどんなトンデモな予言(みたいなもの)が出てくるでしょうね?


243年の間に、12月は8〜9回、6月は10回ほど、太陽背後通過があります。回数の違いは、太陽からの距離によるものでしょう。距離が遠いと軌道傾斜による見かけの上下動が少なくなり、背後通過しやすくなる…と思います。
12月と6月を合計して平均すると、13.5年に一回起きる現象ですので、さほどレアでもありません。でも面白いのは、片方に注目する限り、8年ごとの約10回の背後通過が終わると、その後160年くらいは起こりません。その間にもう片方のシリーズが始まるわけですけど、両方起こらない期間もあります。
ここで疑問が…1902年12月から1976年5月まで、背後通過が全く起こらない期間が74年もある事になります。本当でしょうか?(何か間違っているのかも???)これもシミュレーションさせてみます。

おー、本当だ。かすっているように見えるのは1910.11.26のギリギリ通過にならないものです。


ついでに(?)、ひとまわり243年分のシミュレーションもしてみました。これまたやたら時間がかかりました。ヒマだなぁ、自分(笑)。でもきれいな模様になっていて、なんだかうれしいです。


以上、金星の太陽背後通過を調べてみました。


さて、他の惑星ではどうなんでしょう?という疑問もありますが、なにぶん時間がかかるので、次の機会にしたいと思います。とりあえず、火星を100年分追いかけてみた画像を最後に貼ります。

21世紀のうちに、5回くらいはあるようですねぇ。これまた、なんだか不思議なデザインのような画像になりました。うん、面白いなぁ。またやろうっと。


【追加】
2023年11月17日〜19日の火星の太陽背後通過。これも毎日09時の位置です。

この時の火星は1.5等。これじゃ、見える可能性は低いですね…。
金星の図と比較すると、動きが逆方向であることに気がつきます。内惑星である金星は地球よりも公転速度が早く、内側から地球を追い抜いていくことになります。そのため金星自身の公転方向へ動いていきます。これに対し、火星は外惑星で、地球が内側から追い抜いていくため、逆方向に下がっていくように見えるのです。


  ※ 図の作成には「Stella Navigator ver.5」(アストロアーツ)を使用しました。


そうそう、古いバージョンのソフトはサクサク動きますよねぇ。このソフト、最新バージョンはver.9ですけど、いろんな事ができるようになり、表示もきれいになった代わりに、動作が遅いんですよね…。ただ現象を正確に再現する事にかけては最新版の方が正確なので、新旧使い分ける事にしています。ソフトは賢く使いましょう!