低倍率おすすめ双眼鏡 (4) ミザールSW-525

幻の超広視界


今日は、見かけ視界77.5度を誇る、ミザールSW-525です。

実視界も15.5度。カシオペヤのWがちょうど入る広さです。

おもな仕様

  • 口径:25mm
  • 倍率:5倍
  • プリズム:ダハ
  • 実視界:15.5度
  • 見かけ視界:77.5度
  • アイレリーフ:14.5mm
  • 重さ:440g
  • 最短合焦距離:1.5m
  • 合焦機構:CF
  • 外装:プラスチック
  • 付属品:接眼キャップ、対物キャップ、ストラップ、ソフトケース

ミザールという名前は、一般の方にはあまり馴染みのないブランドかもしれません。が、40〜50代の天文ファンの皆さんにとっては懐かしい名前のはず。昔から、主に普及価格帯の天体望遠鏡を供給している国内のメーカーです。この年代の皆さんでは、『初めての望遠鏡はミザールH-100』という方も多いのではないでしょうか?
(ちなみに、ミザールというのは、「見ざる」の意味ではなく、北斗七星の柄の端から2番目にある、2等星の名前です。目の良い人はこの星の傍らに4等星アルコアがついているのが見えるはず。そう、あの「死兆星」のモデルになった星がアルコアなのです。ついでに、最近、超新星が出現して話題になったM101を見つける時、ミザールからたどって行きます。)
そのミザールが出した SUPER VIEW シリーズ(正式名称かどうか不明。箱に書いてあった文字から推測。)の小さい方が、これです。


上から見たところ。対物キャップが本体に、接眼キャップがストラップに付いています。

本体に「SUPER WIDE ANGLE」、接眼部に「MIZAR」のロゴ。右側接眼部のみ、ゴムがローレットになっているのは、視度調整(左右のピントの違いを調整するため、右側だけ独立にピント調整ができるようになっている)のためです。


下側。シンプルな外観。これで見ると、独特のゴム製対物キャップの取り付け部がわかります。

持った感じは、『単1電池より二回り大きな円筒形』です。


接眼側。超広角にするため、接眼レンズが大きいです。

CF式ピント合わせ用のつまみは大きめで、回しやすくできています。


対物側。接眼レンズとほぼ同じ口径(笑)。


本機には三脚取り付け用ネジ穴があります。陣笠部分がねじ込みになっており、これを外すとネジ穴があります。(右下に外したネジが写っています。)


本機のポイントの一つ、ゴム製対物キャップ。なくさないよう、本体にくっついています。それを外したところ。狸のキン…いやいや、風大左衛門の涙のような形状です。

この対物キャップ、無くさないようにとのアイデアは良いのですが、作りが良くなくて、ゆるゆるです。キャップをしてケースにしまおうとすると、しまっている途中でキャップが外れてしまいます。うーん、アイデアは良いのですけれど…。逆に、眼鏡型の接眼キャップがきつめに作られているのは、なんとも皮肉な事です。キャップのアイデアは良いのですが、設計に加工が追いついていない感じで、アイデアが斬新なだけにかえって安っぽさを感じてしまいます。
が、それを補って余りあるのが、本機の見かけ視界の広さ。これ、広視界好きにはたまりません。ただ、その視界を確保するために接眼部に目を近づけなければならず、結果としてアイレリーフが短くなり、眼鏡の方には使いづらくなってしまいました。
肝心の結像性能ですが、これは超広視野だから無理をしている部分があり、中心像はまずまずですが、像のくずれは視野の40%くらいから始まります。そして像面湾曲もかなり著しく、ピント位置がかなりズレて行きます。
もう一つ問題があります。これは個体差(いわばハズレ)かもしれませんが、右側だけ、視野内のピントが上と下で違うという、変な像面湾曲(?)が出ています。実はこれに気がつくのにけっこう時間がかかりました。広視界がうれしくてハロコンなどのコンサートに何度も持っていったのですが、どうも見ているうちに左右のピントがずれてくるのです。視野が広いので、目的物を視野の上部で見たり、下部で見たりできる、それ故に気づくのが遅れてしまいました。これ、もしかしたら、ダハプリズムの加工精度によるものかもしれません。やはり、安いダハはダメなのかなぁ…?


本機は、眼鏡の方には使いづらいですし、右側のクセがあるので、万人にお勧めできる機種ではありません。が、見かけ視界の広さに取り付かれた人なら、ぜひ一度見て欲しい双眼鏡です。「この価格でこの見かけ視界」というところに着目すれば、コストパフォーマンスはかなり高いと思います。


…が、残念なことにこの機種、現在、メーカーのカタログから消えてしまっており、噂によると再販の予定はないらしいです。どうやら、「幻の超広視界双眼鏡」になってしまったようです。