ニュー・ホライズンズ、冥王星に接近

ついに探査機が冥王星に接近です。既にいろんな画像が送られてきています。
ここで、意外に言及しているところが少ないネタを一つ。それは…


冥王星は、薄暗い。


冥王星の真っ昼間に屋外で写真を撮ったら…???適正露光はこんな感じです。

地球では…
  ISO 400
  F11
  1/500

冥王星では…
  ISO 400
  F11
  2秒

これだとさすがに手ぶれするので…
  ISO 1600
  F2.8
  1/30
こんな感じで何とか撮れるでしょう。

(もし計算間違ってたら教えてください。)


どうしてこうなるのか?というと…屋外の光源って太陽ですよね。冥王星は今日現在でおよそ太陽からの距離、33天文単位。つまり地球から太陽までの33倍の距離があります。照度は距離の自乗に反比例しますので、明るさは1/1000ということになってしまうのです。
ちなみに天体としての太陽は、視直径1'弱、-19等。明るさとしては満月よりも600倍くらいは明るいけど、周囲は夕暮れくらいの明るさでしょう。冥王星ではこれでも真っ昼間ですけど。ついでに地球はというと、視直径0.5"の12等星。「満地球」になっても4等星です。


こんな薄暗い世界ですけど、技術革新ってすごいですよね。昼間みたいな画像を送ってくるんですから。でもこれも打ち上げ(2006年)当時の技術ですので、もしも現在の技術を瞬間移動できれば、もっとすごい画像が撮れるんでしょうね。
それはともかく、自分が生きているうちに冥王星に接近した映像が見られるなんて、感無量です。かつての「最遠の惑星」ですから。(今は「最遠」でも「惑星」でもありませんけど…)


【追記とオマケ】
この日、地球から冥王星までの距離は、32AU(天文単位)。つまり、太陽〜地球間の32倍で、これは光(電波)が届くまで4時間余りかかります。ということは、探査機に何かあって(ちょっとカメラの方向がズレた!等)、修正の指令を出したとしても、それが届くまでに4時間かかるという事です。さらにそのコマンドが正しく実行されたかどうかわかるまでにまた4時間…。こんなふうに遠い空間なので、冥王星最接近時のミッションは全てオートパイロットだそうです。
さて、探査機はこの距離を9年がかりで飛んで、ようやく冥王星にたどり着きました。いや、着いたというよりは猛スピードで通過するんですけど。これがもし、冥王星周回軌道か、冥王星で折り返して帰ってくるような軌道だと、冥王星付近でブレーキがかかるスピードでないといけません。一番遠くで動きがゆっくりになる楕円軌道ですね。ちなみにハレー彗星の遠日点までの距離が、35.4AUほどで、これは冥王星までの平均距離39AUにほど近いものです。つまり、76年周期の楕円軌道ならば冥王星付近でブレーキがかかるわけで、ということは、冥王星付近でブレーキというと、38年ほどかかる軌道になってしまうわけです。これを9年でぶっ飛ばしてしまうわけで、そりゃあブレーキなんてかけようもありませんね。

今回の冥王星への接近は、11000kmとか13000kmとか言われています。これって冥王星の地表面からの距離かな?(冥王星の直径は2370kmと計測されました。)ちなみに、この距離ですと冥王星の衛星軌道よりもずいぶん内側という事になります。もしもリングがあったら、その中に突っ込んで行くことになって、果たして無事でいられるんでしょうか?心配です。


オマケ。2018年7月12日、冥王星から見て「地球の太陽面通過」が起こります。といっても…

太陽

  • 視直径57秒(内合時の金星くらい)、-19等

地球

  • 視直径0.54秒、真っ暗(太陽面通過なので当たり前ですが)

こんな小さな天体同士の会合で、10時間ほどかけて通過します。(Guide 9.0で計算)
下図は「guide 9.0」で作成した「冥王星から見た 地球の太陽面通過」。黒い丸いシルエットは地球で、右側の小さいのは月です。

オマケのオマケ。2019年1月11日、今度は地球から見て「冥王星の太陽背後通過」が起こります。-27等の太陽の背後を、14.3等の冥王星が12時間かけて通過します。光度差が激しすぎる対象なので全く見えないでしょう。けど、星占い屋さんが何か言い出しそうですなぁ…(笑)。いやむしろ何も言い出さなかったらそれはそれで笑い事ですけど。