思い出の曲−“La Cucaracha”

こんな経験ありませんか?
ふとした瞬間に、遠い昔、子供の頃に聴いていた歌を思い出してしまう…でも、歌のタイトルがわからなくい…気になってしかたがない…っていう経験。最近、歳のせいかどうかわかりませんが、寝覚めのぼーっとしている時間に、小学校の頃の事を思い出したりすることが何度かありました。気になったのは、給食の時間や昼休みにかかっていた歌です。とても明るい、愉快な曲調で、楽しくなるような曲なんですけど…。

こんな経験ありませんか?
良く聴いていたはずの歌の歌詞がわからず、適当に聴きおぼえてしまった…でも、意味が通らない…本当の歌詞はどんなだったのかなぁ…気になってしかたがない…っていう経験。上の話と同じ曲なんですけど、曲の一部は聴いておぼえたとおりで合っていると思うのですが、どうもわからない、意味のとおらない部分があるんです。

最近、そんなふうに気になっていた曲、こんな歌詞です。

  • ♪山のふもとまで 続いている道 森のはずれには サイロが見えるよ 車に揺られて、仕事に出かける 僕たちの顔に 朝日がまぶしい

ほら、この曲を知っている人、けっこういるでしょう?でも、曲名がわからなかったんですよ、私。


そこで、調べてみました。
インターネット検索とはありがたいものです。つい先日、疑問に思っていた歌を、検索を重ねて突き止める事に成功したのです。すごい時代になったものだ、とあらためて感心しました。
曲はこれでした。有名なメキシコ民謡だったんですね。
【車にゆられて(ラ・クカラーチャ)(La Cucaracha)】


有名な曲なのでたくさんの動画がありますが、メキシコっぽい、マリアッチらしいものを選びました。途中で切れているのはご愛敬ですw
ちゃんと聴きたい方はこちらを…


調べてみて『なるほど…そりゃそうだよなぁ』と思ったのですが、この曲をはじめ、お昼休みに流れていた曲はNHK「みんなのうた」で放映された曲を集めたLPレコード(当時はもちろんアナログ盤)だったようです。「みんなのうた」は熱心なファンも多く、あちこちのウェブページでリスト化されています。その頃の曲には「車にゆられて」の他にも、「いろんな木の実」「この指1番線」「ドミニク」など、当時聴いていた曲がいくつもありました。
わからなかった一節(それも困ったことにリフレインです)は「ラ・クカラーチャ」でした。実はこの部分が聴き取れなくて、ずっと「さすかなーた」つまり「差す彼方」だと思いこんでいたのです。

  • 差す彼方 差す彼方 でこぼこ道を 差す彼方 差す彼方 車が行くよ

まぁ小学生の耳ですから、ボキャブラリも少ないですし、無理もないと思います。
あと一節、

  • ♪夕日に向かうと 長い影ぼうし ぼくらのあとから 追いかけてくる

という部分、「長い影ぼうし」をなぜか「払いかけの王子」と聴きおぼえていました。

  • ♪夕日に向かうと 払いかけの王子 ぼくらのあとから 追いかけてくる

『お金を全部払っていないので、王子様が追いかけてくる』という、わけのわからないシーンをずっと思い起こしていましたw


さて、次にわき起こる疑問。「ラ・クカラーチャ(La Cucaracha)」とは何でしょう?これ、スペイン語「ゴキブリ」のことなんです。女性名詞・単数なので冠詞「ラ」がつきます。英語の「コックローチ」と語源は同じなのでしょう、「コックローチ」と「クカラーチャ」、なんとなくニュアンスは似ていますね。
さらにわき起こる疑問…こんなに明るい曲調で、よりによってゴキブリの歌を歌うって、どうしてなんでしょう?いったい、どんないわれがあるんでしょう?
そこで、この曲の由来などを調べ始めたわけです。いやぁ、ネット検索とは本当に便利です。たちどころにスペイン語歌詞も訳詞もわかり、私が聴いていた詞の作者が佐木敏氏という方だとわかりました。

 興味とお時間のある方は次のサイトをどうぞ。
  ラ・クカラーチャ 歌詞・訳詞について
  ラクカラチャの謎 この曲のいわれについての研究です  

ものすごく要約すると、この「ラ・クカラーチャ」、メキシコ革命の際の、革命軍の愛唱歌であったということです。実際、ストレートな訳として

  • ♪兵隊は進み 村里へ入り 人々は出かけ これをば迎える

から始まる訳詞もありました。では、なぜゴキブリの歌が愛唱歌になったのでしょうか?それは、諸説あってわからないようですが、主なものは次のとおりです。

  • 敵軍を、嫌われている虫であるゴキブリに見立てた
  • 自軍を、生命力の強いゴキブリに見立てた
  • 兵士の世話をしていた女性の名
  • 女性兵士の名

どの説をとるにしても、「みんなのうた」で憶えた曲の世界とはずいぶん違うものになります。いろいろ考えながら口ずさんでみたり、ちょっとした歴史探訪をしたりすると、「オトナ気分」を感じてしまいます。大人になってから聴く「みんなのうた」も、なかなか面白いものです。


検索していて面白かったのは、「ラ・クカラーチャ」「ラクカラーチャ」「ラ・クカラチャ」「ラクカラチャ」で、微妙に検索結果が違うことです。まぁ、コンピュータによる検索で、字面をそのまま照合するわけですから、当然と言えば当然、むしろコンピュータらしい事ですが。(正直、その要領の悪さ(?)にイライラしかけましたが、『これは面白がった方が勝ちだ』と考えを途中で変えました。)
それにしても、「ラクカラーチャ Youtube」で検索すると出てくるのが、ゾク仕様(?)のホーンだったりするのは笑えます。単純で憶えやすいメロディラインですからねぇ…そういえば、お絵かき玩具「らくがきんちょ」のCMの一節も、たぶんこれじゃないかなぁ。「らくがきんちょ」「ラクカラーチャ」似てないと言えないこともない…ですね。


実は、18年前にメキシコに行ったことがあります。1991年に皆既日食の観測ツアーで行ったのです。行ったことのある国だから、非常に親しみを感じているわけで、今回の発見もとてもうれしいものでした。今夜はYoutubeであれこれ探しながら、メキシコの酒「テキーラ」を飲むことにします。(何気ない話題を星と酒につなげる事に成功w)


◆BGM「テキーラを飲みほして」by中島みゆき

この曲が入ったアルバム「予感」のリリースは1983年。ジャワで見られた皆既日食に行った年です。この曲を聴きながら、テキーラを飲みながら、8年後のメキシコ日食に思いを馳せたものです。そういえば中島みゆきの「夜会」に「金環食」というのもありました。夜会、行ってないけど…。


ついでながら、日食・月食には「サロス周期」というものがあります。これは、ある日食・月食の後、18年11日8時間後に、また同じような食が起きる、というものです。(8時間という端数がついている、という事は、経度で120度離れた場所で見える事になります。同じ場所で見えるという事ではありません。)今年7月の皆既日食、実はこのメキシコで見られた日食の1サロス後で、同じサロス・シリーズ(№136)に属するものなのです。(さらに、誤解しないでいただきたいのですが、サロスは同時に何本も動いていますので、「18年に1回しか見られない」というわけではありません。)


ついでのついでながら、メキシコ革命の頃にメキシコで見られた皆既日食があるかどうか、調べてみました。すると、1923年9月10日に3分36秒ほどの皆既が見られる日食がありました。しかし、そのわずか2ヶ月前、革命軍の英雄パンチョ・ヴィラは既に亡くなっています。彼の家族や、仲間達は、果たしてどんな気持ちでこの皆既日食を見たのでしょうか?さらについでですが、同じサロス・シリーズ(№143)の2サロス前、1887年(明治20年)8月19日は、茨城県でも見える皆既日食であり、当時の観測記録が残っている事を付け加えておきます。