金環食を振り返る(1)

皆さん、昨日の更新「金環食速報」に、たくさんの★をくださり、ありがとうございます。いや、うれしいな。急いで更新した甲斐がありました。
また、ツイッター上でもたくさんの「フィルターありがとう」メッセージ、むっちゃうれしかったです。私財を投じて(大げさ…)天文普及活動を行った甲斐がありました。こうした活動は、皆さんが喜んでくれるのが一番の励みになります。更にそれが皆さんのご家庭やご友人、職場の皆さんにまで波及すれば、望外の喜びです。
フィルターに関して残念なのは、完成が予定より大幅に遅れてしまった事。本当はもっと多くの友人知人に配布したかったのですが、「現場で会う人・メアドを知っている人」程度になってしまいました。直前や今になっていろいろ思いついて、あの人にも送れば良かった、この人にも…と悔やむ事しきりです。『ウチには来なかった…』という方、ホントすみません。この場を借りてお詫び申し上げます。
それにしても、ある日、ある時間帯に、多くの人がいっせいに空を見上げ、同じ天体を見る…。これってとても素晴らしい事だと思います。そこに何か、つながりのようなものを感じてしまいます。ニュースでは経済波及効果を大きく取り上げていますが、心理的なもの、自然への敬意の共通認識、そういった、経済効果以上のものを残したように思います。太陽と月という二つの天体が演じるドラマ、この時代に私たちは本当に素晴らしいものに出会ったと思います。




金環食の私的総括を試みます。まだまだ語り足りない部分がありますので、しばらく「金環食ネタ」で引っ張るかもしれません…。


まず、当日の観測風景と機材の紹介です。


全体風景。三脚が林立。

自宅の庭なので、持てる機材を惜しみなく投入することができます。「忘れ物で失敗する」事がないのが、自宅観測の最大の強みです。(「買い忘れ」っていう可能性はありますが…。)


ペンタックスK-5(初号機)+200mm。フィルターはND100000(マルミ)。三脚は買ったばかりのスリック プロ700DX III。固定撮影。これで「雲の中の金環食」を狙いました。これがメインになる予定だったのですが…予想以上にお天気が良く(笑)、雲が撮れそうにありませんでした。そこで方針変更、ハイライトシーン(金環の前後)をコマ撮りで撮りました。

結果は下の動画でどうぞ。日周運動の動きの予想がテキトーだったため、思うようなコースを通ってくれませんでした。準備不足が露呈した形です。


眼視観望用の6cmクーデ式赤道儀。ミザールAR-1のクーデシステムに6cm屈折を取り付けたものです。モータードライブ(MMD-III)を落札したのですが、調整が間に合わず、手動追尾となりました。が、これでも十分快適に観望できました。

このシステムで思いの外使いやすかったのは、コンデジ(手持ち)によるコリメート撮影でした。接眼部が動かないので構えやすいのです。これなら、シロウトさんがケータイで撮っても大丈夫です。


ペンタックスK-5(弐号機)+10-17mmフィッシュアイ。ノーフィルター。10mmで使いました。三脚は落札したばかりのマンフロット190XPROB。雲台はKTS PRO50。曇って金環食が見られなかった場合、『こんな天気だったんです…』と、これがメインの記録になるはずでした。

たくさんの機材がある中央部に展開しましたが、三脚を蹴飛ばすこともなく、最後まで記録をとり続けました。今年になってから何度か「雲の動き」を撮りましたが、その経験がここで役に立ちました。


ユーストリーム中継システム。右側の望遠鏡に同架したビデオカメラ(右端)からの動画を、中央のHDDレコーダーで録画しつつ、向こう側のノートPCからユーストリーム配信。やかん氏が操作しているモバイルPCで受信を確認しつつコメント。

第一線を引退したHDDレコーダーが活躍(捨てないで良かった!)。14インチディスプレイもアナログ放送時代のもの(捨てないで良かった!)で、最近はこの組み合わせでバーベキューしながらDVDを見るのに使っています。テーブルも椅子も、いつもはバーベキューで活躍している物たちです(笑)。こういう物を惜しみなく投入できるのも、自宅観測ならではの強みです。


ユーストリーム用ビデオカメラを搭載したGP赤道儀。9cm(f=1000mm)屈折にペンタックスistDSボディを付けて拡大撮影。同架したビデオカメラは、Vixen C004-3M、レンズはキヤノンFD200mmF2.8、フィルターはケンコーND100000。

これだけ晴れが続いたのなら、この拡大撮影をメインにした方が良かったなぁ。istDSにはインターバルタイマーが内蔵されていませんので、気がついた時にシャッターを切る、という程度ですが、結果的に最も目を引く(一番大きな金環食の)画像が撮れました。


ビデオカメラ+望遠レンズ。マルチプレートに大型の微動雲台で固定。南北=上下にするため、ちょっと張り出し過ぎて、モーメントがかかって危険…。でも食の終了までがんばってくれまして、観測が終了した途端、ネジがゆるんで、ぐるん!と動いてしまいました(笑)。


ノートPC2台。右はユーストリーム配信用。左は「エクリプス・ナビゲータ」用。このソフト、時刻表示・アラーム・日食経過表示などを同時にしてくれます。日食本番にこそ威力を発揮します。

右のノートは、いつもコタツトップでネットを見たりブログを更新したりしているメインマシンです。左のノートはその先代ですが、現在は星の会の例会に持ち歩いて書記をするサブマシンです。(捨てないで良かった!)
パソコンの上に黄色い物体がありますが、まいまいも使った太陽観察専用3倍オペラグラスです。市販の日食フィルターを買い集めている時に見つけ、衝動買いした(2月21日の更新を参照)のですが、これがなかなか良く見えました。像はまぁオペラグラスですからそれなりですが、接眼部のゴム製アイカップがある事で、太陽光線が目に入らないようにしてあり、また他の物が目に入りませんので視野に集中できるようになります。3倍というのも必要かつ十分な倍率で、特に、太陽の近くに雲がある時、欠けた太陽と一緒に星雲のような雲が見えて、幻想的でした。「肉眼では見えない世界」を見ることができる、という点で、思った以上に良い買い物をしました。


では、さっきアップしたばかりの動画を紹介します。


初号機が200mmで撮影した、金環食ハイライト。太陽を対角線に動かしたかったのですが、残念、ハズレてしまいました。言い訳しますと、ND100000という濃いフィルターを使っていますので、視野内に太陽以外何も見えないのです。視野の端がどこかわからない…という状態でした。でも今考えると、ライブビューで見れば良かったんですよね…。本番中、いっぱいいっぱいで気がつきませんでした。


弐号機が10mmで撮影した、金環食の日の空。1分1コマ×3時間30分です。雲が濃くて太陽が見えなかったら、(そして雨が降らなかったら)これがメインの記録になるはずでした。当日の雲の動き、一時は危機的状況だったのが記録されています。上層の雲と下層の雲が逆に動いている時間帯もあります。


予想以上の好天でしたので、拡大撮影をインターバルタイマーで行い、それをメインの動画にした方が良かった気がします。でもまぁ、天気予報が悲観的で、雲の間から見られれば御の字だと思っていましたので、予定以上の成果だと思っています。


機材的にも、『買っておいて良かった』『落札しておいて良かった』『捨てないで良かった』がほとんどで、『これ必要なかったなぁ』というのはありませんでした。うん、なんでも取っておく、なんでも手に入れておく、それは決して悪いことじゃないぞ…と、あらためて思った次第。こうしてわが家の「物置化」にますます拍車がかかりそうです…(笑)。