金環食を振り返る(3)

前日と当日のバタバタ、グダグダを書きとめておきます。


金環食は自宅で観測する、と決めていましたし、周囲にも宣言していました。なので、当日になって誰か来るかもしれないなぁ、と思いながら準備を進めていました。(例えば『隣のビルのかげになって見えない』等、現象が見える所に住んでいても自宅からでは観測できない、という人もけっこういるのです。)
期待通り、というか、案の定、というか、19日、やかん師匠からメールが来ます。ユーストリーム中継をやりたい、とのことで、回線に不安(うちはまだ光じゃありません)はありながらも、協力することにしました。きっと、機材を満載した車で来るんだろうな、と思っていました。
20日、自分の観測の準備をしていると、師匠から電話がかかってきました。曰く、赤道儀貸してくれ、PC貸してくれ、HDDデッキあるか、今日の夕方最寄り駅につくので迎えを頼む、…etc.。これはもうほとんど笑い事です。ウチで電動追尾が可能なマトモな赤道儀は1台。これは自分で使う予定でしたので…一瞬迷いましたが、「同架する」ことにしました。要するに、一つの赤道儀に2本の望遠鏡を載せるわけです。そのためのプレートは師匠が持ってくることになりました。
しかし、『赤道儀貸してくれ』って何さー(笑)。これって、『相撲とるから褌(ふんどし)貸してくれ』って言うようなものです。ほら、『人の褌で相撲をとる』ってよく言いますよね、アレです。しゃーないやっちゃなー、と思いながらも快諾しましたよ。いや、やかん師匠が失礼なヤツだって事じゃなくて、こんな事をフツーに言い合える関係なんだぞ、ってわけです。


20日夕方…というよりもう夜になっていましたが、駅まで出て合流。昔よく行った「バーミヤン」で腹ごしらえ。…しながらも話ははずみます。ガキさん卒コンの話でひと盛り上がりしました。
帰宅は22h30m頃。それからおもむろに準備を始めます。私のメインの鏡筒と、師匠の望遠レンズ付きビデオカメラを載せて、一緒に撮影できるように、プレートの調整をします。現場合わせですが、ネジの間隔などはおおよそ規格どおりですので、それほど難しい事でもありません。「微動雲台あります?」「あるよ」…まぁ、自宅なので、いろんな物が「出てくる出てくるオモチャのカンヅメ」状態です。
一方で、ウチのPCにユーストリーム用のソフトをダウンロードし、送信できるかどうかのテストもします。現在メインで使っているノートPCにインストールし、送信できるようになりました。この間、予備PC(現在メインの1台前のノートPC。現在は星の会の例会において「書記専用機」となっています。)には日食観測用ソフト「エクリプス・ナビゲータver2」をver2.5にアップデートしました。
ユーストリームに必要なのはPCだけじゃありません。回線とネットワーク環境も必要です。わが家のインターネット環境ですが、昨夏、落雷でハブが壊れて以来、モデムから直にケーブルを引っ張っていました。まぁそれで間に合っていたので、ハブは買ってあったのですがまだ取り付けていなかったわけで、「え?ハブないんですか?」「いや、あるよ」と、必要な物を思いついたらすぐ出てくる状態が継続中です。
そうこうするうちに師匠の悲鳴が…「ファイヤーワイヤーのケーブル忘れた…!」。あー、それないわー。うち、マックじゃないしなぁ…。でもまぁどうにか代替の方法を編み出して解決。こうしてようやくユーストリーム環境が整いました。


この頃生まれた名言。「今日みたいな日は、日本中で、ワーとかギャーとか声が上がるんだろうな…」。つまり、あちこちに遠征して観測する人が多いこんな日は、忘れ物をする人も多いんだろうな…。日本のあちこちで、忘れ物をして悲鳴を上げている人がいるんだろうな、って事です。いやー、これ想像したら爆笑しちゃいましたよ。日本全国ネットで「忘れ物中継」を脳内再生。既に「徹夜ハイ」な状態です(笑)。


気がつくと03時を回っています。「薄明って何時からだっけ?」調べると、あと30分しかない!早速、外に出て、赤道儀のセッティングに入ります。とりあえず組み上げて、北極星が見えたら極軸のセッティングまでしよう、と考えたのです。「自宅で前夜から観測準備」の一番のメリット、それは、「赤道儀のセッティングができる」という点です。赤道儀をちゃんとセッティングしておけば、日食の間中、精度良く追尾してくれるのです。
ところがこの夜はあいにくの曇天。それでも時々、雲間からベガやデネブは見えます。『そのうち北極星も見える…かも…見えると良いなぁ…』という程度の天候で、赤道儀のセッティングどころか日食本番の天気も心配な状態でした。
そんな「雲、ところにより星」な空だったのですが、03時過ぎ、ラッキーにも北極星が見えました。早速、赤道儀のセッティングにかかります。赤道儀の回転軸を「天の北極」に合わせるのですが、今の時代にはこの「天の北極」のすぐ近く、望遠鏡の同一視野内に2等星があるという幸運な時代。つまり、北極星が見えれば赤道儀のセッティングができちゃうのです。さて、各地に遠征して行った諸氏は、赤道儀のセッティングはできたんでしょうか?


その後もあれこれやっているうちに、気がつくと外はすっかり朝です。部分食が始まるまであと3時間ちょっとしかないぞ…という頃、庭にいろいろ機材を出し始めました。いつもバーベキューに使うテーブルが、PCを並べる机に。これまたバーベキューに使うイスとともに、ユーストリームの必要備品となります。そして04h20mの日の出の頃にはPC立ち上げ完了。どんどん観測体制が整っていきます。
最後まで決まらなかったのはフィッシュアイ「空カメラ」の位置。観測風景をコマ撮りするのも面白いな、と思ったのですが、半ば「観測が成功しなくても一応の成果物を残す」ため、当日の雲の動きがどうだったか、という事を記録に残す事にしました。ズームのフィッシュアイを一番広い側にし、なるべく空が入るようにし、隅っこに望遠鏡が入るようにしました。


こうして06h、観測開始。「空カメラ」の最初のシャッターが開きます。空はびっくりするくらいの好天、ほぼ快晴です。こんな日は途中で曇るんだろうな…と思いつつ、かなり盛り上がっての観測開始でした。そしてラッキーな事に、太陽が曇って見えなくなる事は一度もありませんでした。



【中略】日食観測



終了後はぐだぐだと撤収。大きな現象が終わり、ユーストリームも無事に終了できて、満足感あり、虚脱感あり、心地よい疲れを感じながらの撤収です。この撤収を、いくら遅くなっても誰にも咎められない…これも自宅観測の大きなメリットです。
気がつくとお昼を過ぎていました。あとは、HDDデッキに録画した動画をBDに焼き、その間に昼食に行こう…という事になったのですが、ぎゃー、BDの生ディスクがないぞ…。で、早速、買い物に。真っ昼間なんですがお店は空いていますね。ふと気がつくと、今日は月曜日だった、という…。
記録したHDDデッキ(アナログチューナーの時代の物で、最近は第一線を引退して、バーベキューの時にDVDを見るためのプレイヤーになっています)をBDレコーダーに接続するのもすったもんだあって、ようやく昼食に出かけたのは14h過ぎでした。しかし、月曜日って外食するのにも休みのお店が多くて困ります。
ようやく「まるみ食堂」に入って、エビフライ定食を食べました。


…そんな二日間…。ずっと寝ていなくて、BDに焼きながら昼寝ができたのは、15h〜17hというところでしょうか。フルートのレッスンの予約を18h30mに入れていたのですが、ちょっと体力的に無理、帰りに居眠り運転する可能性がかなり高いな、と思い、キャンセルしました。フルートの先生と「金環食、良かったねぇ」と語り合いたかったのですけど。


あれっ?上で二日間と書きましたけど、師匠を駅に送っていったのが20時頃ですから、おおよそ24時間、丸一日ですね。いやぁ、何と濃密な一日だったでしょう。やかん師匠、お疲れさまでした。寝過ごさずに帰れましたか?また一緒に観測しましょう。



追伸。
そういえば日食前後、休肝日が続きました。(東京から帰ってきた日やフルートのレッスンの日は休肝日と決めてあります。)

  • 18(金) ガキさん卒コン。
  • 19(土) 出勤日。夕方、フルートのレッスン。
  • 20(日) 草刈り後に飲みたかったけど、ぐっとガマン。
  • 21(月) 金環食当日。飲む間もなく寝落ち。

その反動が出て、火・水・木と晩酌しちゃいました。でも前に比べるとずいぶん量が減っています。飲む機会が減った分、アルコールに弱くなっている事を自覚しています。