樽の話

わが飲んべえブログでは、よくウィスキーの話が出ます。さて、ウィスキーのあの色と香りはどうやってできるかご存じですか?
ウィスキーは蒸留酒です。わかりやすく言うと、醸造酒であるビールを蒸留して、アルコール分を濃くした酒です。でも、蒸留した直後のウィスキーって、無色透明なんですよね。「ただのアルコール液」に近い感じだと思ってください。その液体に、あの琥珀色、独特の芳香、そしてまろやかな味わいがかもし出されるのは、何を隠そう、樽に入れて長い間貯蔵するからなんです。
そんなわけで、ウィスキー好きな人は樽に興味を持つようになります。いや、みんながみんなってわけじゃないですよ。でも多くの人が興味を持つことは間違いありません。樽の材質がオークだけにw
で、多くの飲んべえは夢想するわけです。“自宅で樽熟成してみたい”と。これはなかなかすごい野望なんですよね。第一に場所の問題。本物の樽はでかくて普通の家では置けません。よく使われる樽は180〜480リットルです。ドラム缶が200リットルですから、まぁそれより大きいわけです。第二に時間の問題。本物のウィスキーを熟成させようと思ったら、10年寝かせるとか、ごく当たり前の話ですからね。あ、第三は予算の問題です…w
ところがです。同じ事を考える飲んべえのニーズがあるためと思いますが、世の中には便利なものがあるのです。その名は「ミニ樽」。材質は本物と同じオーク材を使った樽で、容量が小さいがゆえに熟成が早く進む、つまり、小さくしたことで場所・時間・予算の問題を一気に解決できてしまうわけなんです。ただ、容量が小さいがゆえに、せっかくできた美酒はすぐに飲み干してしまうこと間違いなしwなんですけどね。
ミニ樽とはいえ、買うとけっこう高いです。でもそこは、何でもアリのネットオークション。「樽は買ったけど使っていない」とか「飾りとして使っていた」という人が出品することがあります。そんなわけで落札したのがこの樽です。わが家の樽“1号”です。容量は3リットル。市販の物には10リットルから1リットルまでありますが、これはある意味中途半端な大きさかもしれません。元手がかかりすぎるのはいやですが、かといって成果物が少ないのは寂しいですからね。3リットルなら750mlボトルにして4本ですから、まぁ適当な量なんじゃないでしょうか。


いろいろ考えた末、まずは焼酎で試すことにしました。樽に入れた酒がどんなふうに変わるか、色・味・香りの変化を追うには、色がついていない酒が望ましいわけです。次は、何焼酎を入れるか、ってことですが、香りやクセの強い芋焼酎(これも大好きなんですけど)は避け、あっさりした麦焼酎にしました。麦を選んだのは、ウィスキーも原料が麦(大麦)だっていうのも大きな理由なんですけどね。
さあ、これが半年の間、樽で寝かせた麦焼酎いいちこ」です。左は売っている「いいちこ」そのもの。右が半年寝かせたものです。良い感じに色がついているのがわかります。「いいちこ」みたいに売れている銘柄は、そこそこ安く買うことができますし、元の味を知っている人が多いので、飲んで比較する時に評価しやすいという利点もあります。


いいちこ」は、もちろんそのままでも充分美味しい麦焼酎です。焼酎の中では麦はどちらかというとさわやか系、ライト系になりますが、これが樽で寝かせると、濃厚、芳醇といった表現になります。しっかりした樽香、木の味がしみ出して来るのです。これ、飲んでみるまでわからなかったくらいで、適当な言葉が見つかりません。強いて例えをあげると、日本酒を升で飲んだときの木の香りを連想してください、ってところでしょうか。
実は、この樽に焼酎を満たすのは2回目になります。1回目は約2ヶ月寝かせて、なかなか美味しいのですぐに飲み干してしまいました。2週間めくらいから樽香が良い感じについてくるのですが、半年寝かせてみて、その樽香のつき方に驚きました。単に飲んでしまうとわからないかもしれませんが、さすがにテイスティンググラス、ウィスキーの色も香りも楽しめるようにできています。とにかく香りが素晴らしい!いつまでも嗅いでいたいような素敵な香りなのです。
このエントリー、ブログを始めた時から『いつか書こう』と思っていました。久々にかなり気合いを入れて書いたものですので、皆さんのコメントお待ちしていま〜す。