はやぶさ/HAYABUSA

映画「はやぶさ/HAYABUSA」を見てきました。ご存じと思いますが、小惑星探査機「はやぶさ」が、数々の困難に見舞われながらも、小惑星探査を実現し、昨年6月、地球に帰還するまでを綴ったものです。この「はやぶさ」の映画、3社の競作となっていますが、その公開第1弾(20世紀フォックス映画)です。
映画「はやぶさ」3社競う
本作は、「はやぶさ」という事実に基づいたフィクションです。一人の架空の女性科学者の成長をたどりながら、「はやぶさ」の探査から帰還までのできごとを追っていきます。いろいろ技術的に難しい用語なども出てきて、作中でも語られますが、予習して行くとより楽しめるでしょう。え?私?…私は天文マニアですから…でも、人工天体よりも自然の星の方が好きです。…とはいえ、かなり関心は高い方ですから、通常の3倍は楽しめました。
その筋の方(「はやぶさ」マニアの方)なら、さらにいろいろと楽しめます。役者さんは、現実にいる研究者の皆さんを「完コピ」する事を目指したそうで、例えば西田敏行扮する的場泰弘は、的川泰宣先生そっくりのVサインをしたり、佐野史郎扮する川渕幸一は、川口淳一郎先生の挙動を真似しているし、
…というより、感動して泣いちゃいました。館内のあちこちでも、鼻をすする音が聞こえていました。平日のレイトショーなので、大してお客さんは入っていないのになぁ…。「はやぶさ君」の一人語りが、泣かせてくれるんですよ。人工天体を擬人化して語らせる…これが、しっかりうまくはまっているんだなぁ。
ネット上の評価は、さまざまです。ドキュメンタリーに徹して欲しいと思う人は「演技が邪魔」「泣かせようとしすぎ」との評価。逆に、「十分リアル」「感涙」「泣けました」との評価もあります。けれど、「事実を下敷きにしたフィクション作品」として、かなり楽しめると思います。特にこれ、理系の人、技術系の人にはぜひ見てもらいたい作品です。個人的には、大好きです。


この映画の予告編動画を貼っておきます。


ちなみに本作品の監督は、堤幸彦氏。そう、真野ちゃんの「元気者で行こう!」PVの監督さんですね!


天文マニアとして突っ込むのを、忘れないうちに。オーストラリア、ウーメラ砂漠の星空のシーン、日本から見るわし座〜たて座の天の川の写真が使ってありました。スタッフに天文マニアはいなかった模様です…(笑)。


【追記】
やかん師匠からのコメントで、もう一つツッコミ箇所を思い出しました。
映画中に、お兄ちゃんの形見の望遠鏡が出てきます。それで火星を観測した思い出のシーンが出てくるのですが、この火星が細かく観測できすぎているのです。『そのスケッチ、画像処理後のイメージを手書きスケッチしたでしょ?』ってくらいに。実際に目で観測すると、火星の模様ってやつはコントラストが低くて、実に「難物」なんです。小学生がちょっとのぞいて「模様が見える」なんてものじゃないんですよね。
火星ってやつは、観測の好期が2年2ヶ月ごとにしかやって来ないんですけど、じゃ、あの回想シーンはいつの事なんだろう?と思って、調べてみました。お兄ちゃんが亡くなったのが昭和60年(1985年)ですから、1986年の大接近は見ていないはずです。するとその前の、1984年5月の接近でしょう。この時の接近距離は8000万kmほど。火星は、てんびん座で-2等で輝いていたはずです。
1985年なら、時期的にはむしろ『ハレー彗星を楽しみにしていたのに亡くなってしまった』設定にした方がリアルだと思うんだけどなぁ…。するとお話につながらないからダメか…。
しかし…こんな所にツッコミを入れてしまう天文マニアって、野暮だねぇ…(笑)。