12時間の軌跡

いつか撮りたいと思っていた天体写真があります。このたび、デジタルのおかけでついに撮ることができました。
これです。12時間の星の動きで、半円を描いています。


フィルムの時代はこういう写真を撮るのは至難の業でした。一発勝負ですし、背景の空の明るさがどんどん蓄積されて星をかき消して行きます。極度に条件の良い観測地に行かないと撮れない、高嶺の花の天体写真でした。
ところが、デジタルの時代になり、「比較明合成」というありがたいテクニックが簡単に使えるようになりました。これを使い、30秒露出した720コマを合成したのが上のショットなのです。


一口に「12時間の星の動きを写す」と言っても、なかなか撮る条件を満たすのは難しいのです。まず、「12時間の間、星が見える“夜”である事」が必要です。つまり、日没後と日の出前の薄明の時間をのぞく「夜」の時間が12時間を超えること、ということは、冬至の前後の、夜の長い時期であることが必要なのです。(ヨーロッパなどの高緯度地方なら、この時期が非常に長くなりますが、日本くらいの緯度では冬至の前後だけです。)
次に、一晩中晴れていること。今回、画面左の方を雲が通過しましたが、この程度なら成功のうちでしょう。前の夜はもっと雲が多く、時々全天を覆っていました。そうなると星の軌跡が途切れてしまうのです。
あとは撮影する側の問題ですが、夜に長時間カメラを外に出していると、レンズに露がつきます。この時期だと霜になります。これが昨夜はたいへんラッキーなことに、適度な風があって全く霜がつきませんでした。一応、ヒミツの対策は施したんですけどね。それがなくても、車のフロントガラスに霜が全然つかない、そんな夜だったのです。


ついでに作った動画をアップします。12時間を49秒に短縮しています。


まず、普通の動画。飛行機や雲の動きは、こちらの方がよくわかります。


比較明で星の軌跡を残す動画。SiriusCompを使って、こういうのが簡単に作れます。すごいなぁ。


ずっと『いつか撮れればいいな』と思っていた写真が、運の良さもあって、一度目のトライで撮れてしまいました。これもデジタル技術と、インターバルタイマーがカメラに内蔵されたおかけでず。仮称『わが生涯における傑作天体写真ベスト10』(最終的には10で終わらない事を願いたいです…。)の一つに入るであろう傑作が、あっさりものにできてしまいました。
ちなみに、本当に撮ってみようと思い立ったのは、夜が一番長い、冬至の日だったりします。思い立ってから一週間もたたないうちに撮れてしまったわけで、いいのかなぁ、たいした努力もしなかったけど…とちょっと反省モードみたいな今です。