「お客様は神様です」の勘違い

テレビでカスタマーハラスメント(カスハラ)に関する番組を見ていました。この問題についてのはっきりした意見や解決策などがあるわけでもありませんが、以前から思っていたことを書いてみます。


まず知っていていただきたい事は、「お客様は神様です」三波春夫が発したこの言葉の意味についてなんですけど、彼は「私が歌を届ける先は、目の前のお客様ももちろんいるけれど、その向こう側の神様に向けて歌っている」という意味で言ったそうです。(HPを斜め読みしただけなので間違っていたらすみません。)
でもこれ、うっかりウケてしまい、言うとお客が喜ぶので、興行主の求めに応じて常套句になったしまったらしいです。三波さんもまさかクレーマーにこんな使い方をされるとは思いも寄らなかったでしょう。

日本全国のカスハラ当事者(=加害者)の皆さんは、勝手な解釈で、都合の良いように使っていますよね?ねぇ、自称「神様」の皆さん、あなたが神様なら、ぜひ世界平和を実現させてから自称してください。そうなれば賞賛は惜しみませんし、多少のワガママなら許してもらえるでしょう。でもきっと、そういう愛にあふれた神様だったら、広い心を持ち、文句など何一つ言わないでしょうね。
そもそも「AはBです」という文章であれば、Aとは何か、Bとは何か、定義をはっきりさせないとお話が始まりません。お客様とは…(中略します)お店の方では内心『あんたなんかお客様でも何でもねぇよ、勝手に神様を自称するんじゃねぇよ』くらい思っている場合が多いんじゃないかなぁ…。

さて、日本では「八百万の神」という考え方が古来からあり、神様がそこら中にいる、って考え方のようです。そのせいか、神様の取り扱い、エラく軽いですよね。
神対応」って何ですかね?「私は客なので、神として丁重に扱え」ってことなのかな、と考えたりします。神対応を期待しちゃったりするのかな?これ、もし「神様が対応するんだぞ(≒客だからって威張ってられないぞ)」って意味だったら全く変わってきますなぁ。逆に「塩対応」って言葉がありますけど、いや、塩って無いと困るんですよ、生きるのに…って思っちゃいますね。
神曲」などと言ったり聞いたりしますが、それ、曲を作ってるサイドが言っちゃダメなんじゃないかなぁ…と思ったりもします。
ところで私、ジョークで使っていましたけど、伝達事項を口頭だけじゃなくて、紙に書いたりプリントアウトしたりして渡すのを、「紙対応」と呼んでいました(笑)。


さて、以下、個人の見解による思考実験ですのでご了承ください。日本人の神様観についての考察です。(勝手に主語を大きくしていますが、実のところ「私の…」ですね。)
結果を先に言ってしまえば、大自然そのもの、これこそが神様じゃないのかなぁ?恵みもありますが、反対に、地震、台風、洪水、落雷、いくらでも脅威があります。なんかわからないけどものすごい力の持ち主(=神様)がわしらを危機にさらしているぞ。なんとかして荒ぶる神様を鎮めたい、そのために貢ぎ物を捧げる事から始まり、社に奉ってみたり、そしていろんな宗教が出てきたりしたんじゃないかと思っています。
大自然そのもの、ですから、神様に言葉は通じないし、人格も意思もありません。もし人のような思考パターンがあったとしても、ものすごく気まぐれで、誰に迷惑かけるとかは一切気にしない、そんな感じでしょう。貢ぎ物などしても、した側の気休めにしかなりません。
「触らぬ神に祟りなし」と言います。畏れ多い相手とは距離を置き、触れないようにする、これに越したことはない…という生活の知恵でしょうか。
まぁそんな感じで、わけわからんけどすごいパワー(正も負も)を持ったヤツのことを神様って呼んでいるんじゃないか、と思うわけです。なんなら、取りあえず分類して名前をラベリングしとけばちょっと安心、って感じかもしれません。全ての恵みをもたらすか、あるいは滅亡を招くか、そういうヤツを畏れて「神様」と呼んでいるのでしょう。


してみると、「お客様は神様です」って、あながち外れてもいませんねぇ…(笑)。祟り神とか貧乏神も多いんでしょうけど…。