「板垣彗星」の観測

今日は仕事が早めに終わり、幸運にも良く晴れていたので、夕空の彗星観測ができました。


山形県板垣公一さんが14日に発見した新彗星、C/2009E1「板垣彗星」(発見事情はこちら)を観測することができました。日本人の名前がついた彗星を観測するのは、なんとなくうれしいものです。とはいえ決して明るいものではなく、わが家で最大の口径31cmの望遠鏡でようやく見える、という程度です。
他に、同じ31cmで、144P(串田彗星)、C/2006OF2(ブロートン彗星)も観測。どちらも、暗くて小さい彗星です。


口径31cm反射望遠鏡(ドブソニアン式架台)


さらに双眼鏡で、C/2007N3(ルーリン彗星)も観測。ルーリン彗星は先月下旬に地球に最も接近して明るくなったのですが、それから半月以上たってずいぶん遠ざかり、暗くなりました。先日までは口径5cmの双眼鏡を手持ちで観測していましたが、今夜からは口径8cmの双眼鏡を三脚に固定しての観測です。

三脚につけた11×80双眼鏡(倍率11倍、口径80mmの意味です)


今夜の観測レポートです。14日のルーリン彗星の分も含みます。

C/2009E1 (Itagaki)
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
2009E1 2009 03 17.44 aS 10.6 TJ 31.7L 6 146 1.0 3/ ICQ XXx*****

144P (Kushida)
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
144 2009 03 17.45 xS 11.5 TJ 31.7L 6 86 1.4 2 ICQ XX *****

C/2006OF2 (Broughton)
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
2006OF2 2009 03 17.46 xS 12.1 TJ 31.7L 6 146 1.0 2/ ICQ XX *****

C/2007N3 (Lulin)
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
2007N3 2009 03 14.50 xS 7.4 HV 5.0B 7 9 3 ICQ XX *****
2007N3 2009 03 17.48 xS 7.4 TJ 8.0B 11 5 4 ICQ XX *****

観測終了は20時40分頃でしたが、それから片づけ、夕食をとりながらのデータ整理、観測報告メールの作成、メール送信とひととおり終わり、ようやくブログが更新ができるまで、まる2時間かかってしまいました。


【追記】観測レポートの解説
あまり面白くないので、ヒマのない方は飛ばして下さい。

彗星を眼視(写真や画像でなく、目で見る)観測してどんなデータをとるか、というと…

  • 彗星の明るさ
  • 見かけの大きさ(角度で表します)
  • 集光の度合い(「DC」といいます)
  • 尾があれば尾の長さと角度

あとデータに必要なのは、彗星の名前、観測年月日と時刻、観測機材の口径と倍率、比較に使用した恒星データの出典、観測者コード、です。
さて、各データの2行目はカラムの内容を簡単に表していますので、項目ごとに見ていきましょう。

  • IIIYYYYMnL …彗星の記号/符号。周期彗星なら「番号P」(Pはperiodic cometの頭文字)、それ以外は「発見年とローマ字と番号」です。
  • YYYY MM DD.DD …観測した年月日をUT(世界時)で記入。時刻は日の小数で表します。
  • e …大気吸収補正に関する情報。天体は大気の吸収で、高度が低いほど暗く見えます。それを補正した場合、ここに補正の方法を記入します。上のデータですと、板垣彗星に「a」と記入してありますが、これは決められた表aを使って補正したことを表します。
  • M …光度目測の方法。「S」と記入してありますが、これは、彗星とピントをぼかした恒星の明るさを比較する方法です。光度(明るさ)のわかっている恒星と比較することによって、彗星の光度を目測するわけです。
  • /mm.m: …光度。上記の板垣彗星なら「10.6等」と目測したことを記入しています。
  • r …比較星の出典。「TJ」というのは「ティコ・カタログのジョンソンV等級」を表します。
  • AAA.ATF/xxxx …使用した望遠鏡。Aは口径(cmで表す)、Tは光学系の種類(屈折はR、反射はL、双眼鏡はB、肉眼はE)、F/は口径費(カメラレンズのFと同じです)、xxxxは倍率です。
  • /dd.dd …彗星のコマ(頭部)の直径を、角度の分で書きます。満月の見かけの大きさが30分です。
  • nDC …DC(中央集光度)、つまり、明るさがどのくらい中央に集中しているかの度合いを記入します。拡散状なら0、恒星のように集中していれば9です。この数値の決定にはそれなりの経験を必要とします。
  • /t.ttmANG …尾があった場合、その長さ(角度)と、方向角(北から東回りに測った角度)を記入します。
  • ICQ XX …ICQへ報告する場合、「ICQ XX」と記入します。
  • OBSxx …ICQから割り振られた観測者コードを記入します。名前のイニシャルになりますので、このブログでは隠しています。

こんな感じで、標準化されたパターンで観測報告することにより、世界中から集まったデータの一つとして活用する事が可能になります。一人の観測ではあまり意味のないデータかもしれませんが、たくさん集まることによって彗星の光度変化などの現象がわかったりするのです。ただ、私の観測は、「あまり精度が良くないデータ」として、集計の際にはねられているかもしれませんけど…w