ギター修理中


ギター1台、修理に出しております。マーチンD-28(1967)、ハカランダのものです。
この時に使っていますね。リンク→2012年4月20日


これが、うっかり弦を緩めないで置いていたところ、ブリッジが剥がれてしまいました。失敗、失敗。こんな状況です。

ボディからブリッジが浮き上がった状態で固まっています。


その間隔は5mmほど。もちろん演奏できるレベルではありません。


中には『ギターの弦はゆるめなくても大丈夫』という持論の方もいらっしゃいますが、新しめのギターを5年くらい使うのであればそれも良いかもしれません。また、弦を張られている事を前提に設計されているギターもあると聞くことがあり、そういう場合はネックが逆反りを起こすそうです。
が、ビンテージの場合は全然違います。既に数十年もの間、弦の張力で引っ張られて来たわけですから、ブリッジなら、今剥がれてもおかしくない…という状況のはず。ネックなら、特にマーチンのアジャスタブルでない普通のネックは、既に修理が必要なレベルになってしまっているものも多くないと思います。
木でできたパーツを組んで接着してあるものに、一方向の力を加え続けるわけですから、長い年月の後には狂ってくるのは当然ですが、よくできた物だとそれでも演奏可能な範囲のことが多いです。ただ今回の場合はアウト…。


考えてみれば、自分の身体も似たような状態で、一昨年あたりから「治療が必要な状態」になりました。普通に使っていて年月を経れば、味わいも出る一方、どうしたって痛みが出てくるもの。思わず、自分の事を投影してしまいます(笑)。


修理は、マーチン社の日本代理店である○澤楽器店にしました。けっこう高いと聞きますが、ここに出してダメならダメでしょう…との思いがあります。それと黒○楽器、渋谷の店舗のマーチンフロアで一本D-28を買ったことがあり、前に行ったとき、フロア長の方は私を憶えていてくれました。これ、言ってみれば『つながりができた』って事で、その時もD-45の話をしたら、いろいろ試奏させてくれました。デメリットとしては、『次の一本を勧められる』事ですね(笑)。
そんな黒澤○器(もはや伏せ字の意味がないw)の渋谷店に持ち込んだのが8月2日。マウントレーニアホールで「やなわらばー」ライブがあった日です。(地方に住んでいるので簡単に渋谷へは行けませんからねぇ。)担当のSさんとお会いし、直接預けてきました。『まずは見積もりをお出しいただく、次の連絡は留守伝に』というのが約束。それから、長い時が経ちます(笑)。


8月2日 店舗にギター持ち込み
 この間、記録されたものでは、一切連絡なし
 見積もりには時間がかかるだろうとは思っていました。バラさないとわからないし、お盆もはさむし…
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 でもさすがに一ヶ月過ぎて連絡もないので、電話してみました。
9月6日 こちらから電話する
 担当不在につき、連絡を待つ
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 この後、何度か留守伝あるも、価格など肝心なことは一切言わないので、内心イラッと来ながら待つ
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9月17日 AM (以下、録音から書き起こし)

黒澤楽○渋谷GclubのSと申します。お世話になっております。
何回かお電話させていただいていますがお出にならないようですので…
留守番電話でのお見積もりの表現は避けさせていただいておりますが、このたびあらためてご案内させていただきます
ブリッジのコンディションですが、今現在、ゆがみが多くしっかりなおして約20万と消費税
こちらでも再発する可能性が高いということで、その他も含めてそのくらいの価格ということです。
またあらためてお電話させていただきます。

ツッコミどころ満載!留守番電話では金額言わないのね!?それ、最初に言わなきゃダメじゃん。「連絡は留守伝で」って時に言っとかないとダメじゃん。まぁ、言われてみれば、「留守伝一つで家庭不和」(笑)ってあり得ますからね…。たぶんそのクレーム実例があって店内ガイドラインが作られているんでしょうね。で…ダメだこりゃ、と感じ、この点を突っ込んでギター引き上げよう…とも思いましたが、しばらく頭を冷やしてから行動なり返答なりする事にします。
これがまたイヤーなタイミングで、おかげでBerryz工房の楽しい楽しいFCバスツアーの最中、脳内の2割くらいはこの件を占めていました…。
これがあったので、先日の更新を「感覚の相違…すれ違い」というテーマにしたのです。
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 これ以後しばらく録音されたメッセージなし
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9月29日 こちらから電話
 二度目にSさんにつながる
 正直、怒っていたが、こちらにも落ち度はある、と冷静をつとめ、丁寧に対話
 お話は終始やわらかく、怒っている態度は一切出していません(長年培ったビジネススマイル(笑))
 見積もり書をメールで、と、メールアドレスを伝える(最初からこっちにすれば良かった!!)
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10月26日
 ついに見積もりが届く(e-mailにて)
 この間一ヶ月かよ!と、一人でツッコミ…(笑)
 さすがに20万とは書いていませんでした。というのは段階的に修理を行っていくため…ってことのようです。
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11月2日 返信=修理依頼
 持ち込みから修理開始まで、三ヶ月かかるんですねぇ。
11月5日 確認返信
 「まさか、先払いじゃないでしょうね?」とメールしたんですけど、若干の皮肉を込めているの、わかったかなぁ?わかるわけないか…(笑)。


お見積もりについての説明書きです。現在、「とりあえず1.をやってみる」という段階です。

<リペア詳細> : 納期 約2〜3ヶ月程

1.ブリッジベース剥がれ
剥がれた接着面に、二液性の強力接着剤が絡まっており(※既に誰かの手が加えられています)、
リペアの為に取り外すことすら困難な状況です。
なんとか取り外して接着面を面出しし、再接着を試みます。
また、一弦側にはトップとブリッジとの接着位置に穴が空いており、下が透けて見える状態です。
接着面の空いた穴は裏から塞いで接着しますが、既に内部ブリッジプレートが「くの字」に折れ曲がっており、
強度的に非常に不安です。
上記は、なんとか強度の補足をして接着を試みますが、木の動く様子を見る他ありません。

2.トップ・バックブレイシング剥がれ
1.の施工が完了して初めて行えるリペアとなります。

ここまでは、「ギターの木部その他耐久に関するリペア」となります。
以降は、上記1.2.が完了した際のギターのプレイアビリティに関するご案内です。

3.プレイアビリティ確保のための施工
ネックの状態やフレットの状態によっては、リフレットまたはフレット擦り合わせ、ネック再接着もあり得ます。

※2.3.に関しては、1.の施工次第の見積もりとさせて頂きます。

また、本件は「補強による施工」をする必要があるため、状態が目まぐるしく変化し得る内容です。
すべての施工におきまして「やってみなければ分からない」といった、曖昧な表現、推測でのご案内になりかねません。
よって、本件の施工におきましては「修理内容の保証が出来かねます」ことをご了承下さいませ。

施工をすることによって「確実に状況は好転します」ことだけは、間違い御座いません。
しかしながら、お客様の満足度に届くかどうか、今後再発する可能性がゼロではないことを予め申し上げさせて頂きます。

今一度御検討頂きました上で、何なりとお申し付け下さいませ。
引き続き、何卒宜しく御願い致します。


まぁこんな感じで、D-28が1台、修理中です。
時間がかかっていますが、どうせ人気がある工房だと半年待ちなどは常識、三ヶ月で修理開始は早い方(と言っても一ヶ月分くらいは無駄に過ごしていますが)、と思っております。アコギの修理は、半年でできあがったらめっちゃ早い方でしょう。でも1年かかったら長いと感じるだろうなぁ…。