12月21日の皆既月食

明後日、12月21日の夕方、皆既月食が見られます。日本では、現象の後半部分、皆既となった月が復円して行く様子が見られます。
月食は、月が地球の影に入り、太陽光がさえぎられて暗くなる現象です*1。地球のどこで見ても、欠け始めなどの時間は同じですが、その現象の時刻に月が出ていないと(地平線よりも上に見えないと)見えない事になります*2
月が出る時刻や、同じ時刻における高度なども日本各地で異なりますが、ここでは札幌・東京・福岡における、月の高度(単位は角度の度。小数点1位まで表記。)を掲げます。皆既食の初めから見られるのは、若狭湾・琵琶湖・志摩半島付近より東側となります。

現象 時刻 高度(札幌) 高度(東京) 高度(福岡) 備考
半影食開始 14時28分 地平線下 地平線下 地平線下 *3 
本影食開始 15時32分 地平線下 地平線下 地平線下 欠け始め
皆既食開始 16時40分    6.5    2.2 地平線下 全部欠ける
皆既食最大 17時17分   12.4    8.5    1.0  
皆既食終了 17時54分   18.5   15.2    7.3 全部欠ける
本影食終了 19時02分   30.3   28.1   20.1 欠け終わり
半影食終了 20時06分   41.6   40.7   32.8  

※ 「天文手帳2010」より抜粋


以下、各地の18時の月の様子です。方位・高度目盛は10度刻み。月は実際よりも大きく描いてあります。月が赤いのは月食中だからで、この時刻だと皆既が終わって左側がわずかに明るくなっています。

  • 札幌 2010年12月21日18時00分

  • 東京 2010年12月21日18時00分

  • 福岡 2010年12月21日18時00分


東京における18時〜21時の、30分おきの月のようす。下から、18時00分、18時30分…の順です。19時を過ぎると月が復円しているのがわかります。


月が地球の影に入る…という事は、『真っ暗になって見えなくなるんじゃないか?』という気もしますね。でも実際は、地球の周囲の大気による屈折によって波長の長い光が通過し、赤黒く見える事が多いです。その色や明るさも、毎回毎回違っていて、真っ赤に見える事もあれば、ほぼ見えないくらい真っ暗になる事もあります。これは、地球の大気の汚れ具合で変わるようで、大きな火山の噴火などがあった年は真っ暗になることがあるようです。果たして、今年はどんな色になるでしょうか?楽しみです。


それでは、月を拡大した予報図です。17時50分から10分ごとの図。月が地球の影から出ていく様子です。天頂方向を上に(=地平線方向を下に)してあります。









  ※ 図の作成には「Stella Navigator ver.5」(アストロアーツ)を使用しました。


皆既中の月の観察には、望遠鏡があるとより良いですが、双眼鏡でも十分です。双眼鏡がブレないように、三脚に固定したり、物干し竿や車の屋根に乗せたりして観察しましょう。手持ちの場合は、しっかり脇を締めて持つことが大事です。
皆既が終わって部分食になったら、形の変化は肉眼でも十分わかります。でも、“見る見る変わっていく”わけではありませんので、5分に一回とか、10分に一回、観察してみれば十分です。


この次に日本で皆既月食が見られるのは、来年2011年6月16日の早朝になります。(マスコミの書く天文記事には必ずあるよね、この一説www)


最後に、大事な注意事項があります。今回のように地平線近くの天文現象の時は、ほぼ水平方向に双眼鏡や望遠鏡を向けることになります。なので、都会や住宅地では不審者と間違われないように気をつけましょう(笑)。

*1:と言うと、『なぜ満月の度に皆既月食にならないの?』と不思議ですよね。それは月の軌道が微妙に傾いていて、いつもは地球の影がある空域の北や南を通過して行くからなのです。

*2:これを月中心に考えると、月面から見て、見える方の側にある場所(海とか陸とか国とか)から見ると、月食が見えることになります。

*3:半影食というのは、太陽が面積体の光源であるが故の現象で、太陽の光の一部がさえぎられている状態です。この時に月から太陽を見ると、地球による部分日食が見られることになります。