静止衛星を肉眼で見た話

10月6日の更新(謎の3等星)にちょっと書いた「興味深いもの」ですが、表題のとおり静止衛星でした。最大で3等級に見えていました。

6日は見ただけで、写真も撮っていないので、確実性がいまひとつです。もう一度見られないかと晴れを待っていたところ、11日未明、よく晴れました。
同時刻、同方向で再現性があれば…と、スカイメモで撮影の準備をしていたところ…なんと!早々と3等級で(別の衛星が)見えていました!
この後大慌てで組み立てて、極軸もろくに合わせず、あちこちネジの緩みもあったと思います。ひどい写真ですが、全コマ合成したものがこれです。

10月11日01h28m30s、Pentax K-5、レンズは70mm(35mm判なら105mm相当)、スカイメモで恒星追尾。20秒露出+10秒中断(毎分2コマ)で180コマ撮ったうちの170コマを比較明合成したものです。(最後の頃は雲が出ましたのでカット。)
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部分拡大です。同じラインをいくつもの光跡が動いて行ったものです。
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20秒露出の一コマを抽出。
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わかりづらいので、中央付近をトリミングし、明度を上げました。恒星は20秒間追尾しているので点像ですが、衛星は恒星に対して動くので短い直線になっています。
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ステラナビゲーター11で衛星の名前を調べました。f:id:docan:20211012202433j:plain

3つ前の画像で見ると、2個の衛星が3等級になっていることがわかります。


なんでこんなに明るくなるんでしょう?解説したページがないかと検索してみたのですが、特にヒットするものはありませんでした。ただ「美星町 星のデータベース」に「静止衛星は見えるか」というのがありました。(リンク張ってみましたのでお読みください)ここに「変光星の増光と誤認されることもある」とありましたので、どなたか天文好きな方が見つけて報告した事があるのでしょう。3等級だと、星座の星の並びを憶えていないと気づかないし、見ていると数分間で暗くなってしまうので新星ではない…と、変光星の増光と判断する…ということはそれなりに天文を知っている人に限られるわけです。

素人考えですが、この時期の、太陽の赤緯と衛星の太陽電池パネル又はアンテナの向きの関係ではないかと思います。
放送衛星通信衛星ですと、衛星のアンテナは所属国の方向を向いているでしょう。そこまでの指向性がないにしても、大まかに「地球の方向」へ、いつも向いているはずです。地上から見てアンテナの向きが「固定」されているならば、あとは太陽の照らす角度によって地球に行く光束が決まるはず。…等々、いろいろ考えております。

衛星の名前を調べるのに使ったソフトウェアは「ステラナビゲーター11」ですが、たいへん優れたソフトで、人工衛星が、地球の影で見えない状態か、太陽光が当たっている可視状態かを区別して表示できます。最初の画像、この右側に、実は大きな地球の影があり、明るく見えた衛星は影から出てすぐの位置にありました。
これ、衛星から見ると、太陽と地球が同じ視線から「ほんの少しずれただけ」の位置になります。つまり「ほぼ正面に反射させると地球を照らす」ことになります。

ちなみに、月食の時によく解説で描かれる「地球の影」の図は、月軌道付近におけるものなので、静止軌道における影よりだいぶ小さいです。

今回、6日と11日、少なくとも5日間にわたって見られていますので、ある程度、時間に幅のあることだと思いますが、今まで話題になっていないですし、この時期に限られた事なのでしょう。太陽が冬至点で折り返して同じような赤緯になる3月10日前後、またこの現象が起こるかどうか、見てみたいと思っています。