ダメな月(放送中の間違い)

NHK大河ドラマ「青天を衝け」の劇中映像が情けなかった…というお話です。
毎週楽しみに見ていますが、今日は天文マニアならではのツッコミどころを作ってくれました。わが家のテレビ画面を撮影した画像でご説明しましょう。
物語、今週は、井伊直弼による安政の大獄から、桜田門外の変が起こるまで…という、前半の見どころと思われる回です。

桜田門外の変が起こってしまった後の話。
場面は、謹慎を命じられた徳川斉昭、水戸に戻り、夜の酒宴。この後、斉昭が倒れてそのまま亡くなる、という場面の月です。
月を見上げる斉昭。
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【部分拡大】
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ほら、裏返し。危難の海が左側にあり、ウサギも左側で頭を垂れています。ガッカリです。

次はこちら、江戸の一橋家で謹慎中の徳川慶喜。父・斉昭の死を知り、謹慎の部屋、「謹慎では親の死に顔も見に行けない」と嘆きつつ、壁のすき間から月を見上げる場面です。
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【部分拡大】
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全く同じ、裏返しの月。これまたガッカリです。

今時、裏返しの月なんて使うのか…と驚きました。今の技術なら望遠レンズで自前で撮れば良いのに、もしかしてどこかで買った画像なのかな?それとも経費ケチって知り合いに頼んだのかな?
そもそも天下のNHKですよ。こういう考証ってしないのかなぁ?しかも大河ドラマ、経費をケチっているわけはないでしょう。大河ドラマともなれば、細かいところまで(農民の衣裳とか、農作業の様子なども)当時の様子を再現して、細かい作り込みを「売り」の一つにしています。でも天文だけは蚊帳の外?「お粗末」の一語に尽きます。
裏像もそうなんですけど、2枚目、慶喜が見た月は、父・斉昭が亡くなった知らせが来るのは早くても翌日のはず。(夜中に月を見て倒れて亡くなったとして、どんなに早くても水戸から江戸まで知らせが届くのは翌朝でしょう。)だとすると、満月から少し欠けていないとおかしいんですよね。

そもそも創作物なので、「史実と異なる」とか「合っていない」とか指摘するのは野暮かもしれません。が、こんな基本的な事が正しく表現されていないと、気分が白けてしまいます。がんばってくださいよ、NHKさん!