天の北極を探検しよう (2)


昨夜の続きです。


矢じりの中心である北極星のすぐ隣、角度にして20分ほどの位置に6.5等星があります。矢じりマニアの皆さん、これ実にうまくできていますよ。というのは、矢じりを矢につけやすくするために、矢じりのへこみの部分が三角形よりも「台形に削られている」場合があるのです。北極星とこの6.5等星、ちょうどその台形の上辺になります。ついでに、この2個の星、知る人ぞ知る「北極星のハートリング」の一部、ハートの中でも最も明るい2個なのです。


ステラナビゲーターの画面より。(以下、同様。)
「矢じり」と「ハートリング」。北極星のすぐ右の星が上記の6.5等星です。


ハートリングの大きさは約1度。8等とか10等の星まで見えないときれいに見えませんので、望遠鏡の対象です。こちらは恒星時03時の時に正立。くじら座の頭が南中し、アルゴルが天頂近くに来る頃です。あ、でも倒立像の望遠鏡では逆の15時。てんびん座が南中する頃に、経緯台に乗った望遠鏡で見てみましょう。(赤道儀だと導入しづらいです…。)
ちなみにハートリングと矢じりの位置関係ですけど…ハートは「矢じりの股間にさかさまにぶらさがっている」、という、タヌキのキン○マ状態です(せっかくのキレイな話が台無しだ…笑)。まぁ、ダイヤも金も、大事な宝物ということで(笑)。「ハートリング」の他にも、「エンゲージリング」とか、いろいろな名前があるようです。


ハートリング。ちなみに左上の+印が天の北極です。


回転しますので、季節により、時間により、方向が変わります。


さて、現在の天の北極をさらに追いつめましょう。北極星から1.6度ほどのところに6.3等のλUMiがありますが、現在の天の北極は、北極星とλのほぼ中間にあります。詳しく言うと、中間よりもよりもほんの少し北です。いや、少し北って、そりゃ天の北極だから北なのは当たり前だけど(笑)。
もう1個、矢じりの外になりますが、7.1等の星があり、天の北極はこの3星の三角形の中にあります。名付けて「北極の一等三角点」。または「きたのさんかく座」。1900年から2080年頃まで、天の北極はこの三角点の中を移動して行きます。(ちなみに天の北極が「矢じり座」の中にあるのは、1845〜2445年までの600年ほどです。)


1950〜2150年までの天の北極を50年おきにプロット。クロスは2000年の位置。


構成する恒星(←まだ言ってる…w)

バイエル名 本名 明るさ 備考
きたのさんかく座α こぐま座α 2.0m 北極星
きたのさんかく座β こぐま座λ 6.3m  
きたのさんかく座γ HIP45919,SAO1401,etc 7.1m   


今日のお話の最後に、「天の北極」がいかに恵まれているかを…。比較するのは反対側の「天の南極」です。以下、それぞれの極を同じスケールで描いたものですが、6.5等以上の恒星(好条件下で肉眼でも見える明るさ)には数字をふりました。8度の範囲内に6.5等級よりも明るい星が、それぞれいくつあるでしょうか?ましてや2等星なんていう明るい星が、たまたまこの範囲にある事の奇跡…!!!

「矢じり」と、1950〜2150年までの天の北極を50年おきにプロットしてみました。

天の南極。四辺形は、天文マニアの間で比較的知られている、はちぶんぎ座σを含む四辺形です。


参考に。勝手に「みなみのしかく座」を創設しました(笑)。5等星ばかりです…。

バイエル名 本名 明るさ 備考
みなみのしかく座α はちぶんぎ座σ 5.5m
みなみのしかく座β はちぶんぎ座χ 5.3m  
みなみのしかく座γ はちぶんぎ座τ 5.5m   
みなみのしかく座δ はちぶんぎ座υ 5.8m   

余談です。星座の名前で、「みなみ○○座」と頭に「南」が付くのが4個あります。(みなみじゅうじ、みなみのうお、みなみのかんむり、みなみのさんかく)反対に「北」はありません。(昔、すでに無くなった星座には「北はえ座」があったらしいです。)このことは、現在の星座の成り立ちが北半球主導である事を示しています。まぁ、南側には陸が少ない=人口が少ない、っていうのもありますねぇ。