天体観望会のお手伝い

強い寒波襲来のこの頃ですが、皆さんいかがお過ごしですか?私はこの寒空の中、とある小学校での天体観望会のお手伝いに行ってきました。
あ、「観望会」(かんぼうかい)って言葉、あんまり一般的じゃありませんね。「観測」というと何か数値的なデータを残す行為に思えます。「観望」はそれよりもライトな感覚ですね。もしかすると「観察」よりもさらにライトかもしれません。バードウォッチングだと「探鳥会」という言葉がありますが、それに近いかなぁ。でも「観望会」のウラの意味として、風邪ひいちゃうぞ「感冒会」っていうのもあります(笑)。


私は天文の同好会に入っていますが、年間いくつか観望会の依頼があります。小学校やPTAの行事として、講師を招いていろんなお話をする会を開く、っていうのは想像できると思いますが、その類いです。星についてのお話をして、その後、グランドに出て実際に星を見る、というイベントなのです。
具体的な流れは、一人の講師が室内で話をしている間、数名の望遠鏡スタッフがグラウンドで機材を組み立てながら待機。お話が終わると子供たち(+保護者の皆さん)がグランドに出てきて、望遠鏡を使って天体の観察をする…ということになります。


今日はその望遠鏡スタッフ。口径9cm屈折望遠鏡を持って学校に着くと、既に他の望遠鏡スタッフはスタンバイしていました。室内ではお話が進んでいる様子。いそいそと組み立てて時間を待ちます。ちなみに、家を出る時には晴れていた空ですが、小学校に着く頃には薄曇りになっていました。でも今夜は大丈夫。月という強い味方がいるのです。つまり、多少の雲でもよく見える対象がある…って事。実は、良く晴れているときは、月の明かりは星を見るのに邪魔なのです。今日くらいの上限過ぎの月は特に、です。ところが雲がある時は全く話が違い、頼れる存在になるんですねぇ。…いや、こちらが都合良くそういう扱いしているだけですけどね(笑)。
さて、元気の良い少年少女が出てきます。今夜の子供たちは小学6年生だそうです。6年生ともなれば楽です。低学年だと、望遠鏡を「のぞく」ということができない子供もいます。接眼レンズ側の目をつぶってしまったり、のぞくのではなく接眼レンズ面を「見る」子供もいます。うまくできなくて泣きそうになる子もいて、ちょっと気の毒なこともあります。でも今日はその心配はありません。
私の望遠鏡では最も簡単な、低倍率で月を見せました。月の全体が視野に入るのでわかりやすいです。「こちらの望遠鏡では月を見ています。今夜は右側の方にクレーターがたくさん見えますよ。」と呼び込み。
子供たちの反応はいろいろ。のぞいている時間も長かったり短かったり。短くても「うわ!何これ!すごい!」と、一瞬で見ていることを把握する子もいます。長くても、黙って感動をかみしめている(らしい)子もいます。十人十色、実に面白いです。
さらに面白かったのは「右上に、綱みたいの見える!」って言う子がいました。これ何かっていうと、“虹の入り江”という月面の地形で、大きなクレーターが半分埋もれていて「湾」のようになっている場所なのですが、ちょうど明暗境界線にあって凹凸がよく見える場所なのです。この入り江のループ型と、細かいでこぼこが「綱」に見えた、というわけです。いや、面白い表現をするなぁ。こちらが楽しませてもらっちゃいました。
そうするとこちらも乏しい知識をフル動員。「ちょうどこの“虹の入り江”の近くに、中国の探査機が着陸して活動していますよ。」と、タイムリーなネタを披露します。このへんの臨機応変なところも、場数をこなしているからこその技です。(あまり計画的ではない、とも言えますが…w)
お隣の大きな望遠鏡では木星を見ていました。木星は月に次いで頼れる存在で、やはり多少の雲があってもよく見えます。木星本体とともに衛星も楽しい眺めですが、今夜は、木星本体に衛星の影が投影されていました。それはたまにある事なんですけど、なんとこの影が2個。これはかなり珍しい事です。ところが、後で調べたら、このうち1個は衛星ガニメデそのもの。つまり、木星本体の輝度よりも衛星の方が暗いので、まるで影のように見えた、というわけです。(あ…実はこんなふうに、お仲間の望遠鏡をのぞかせてもらうのも、観望会の楽しみの一つだったりします。)
観望タイム終了後、調理室で豚汁をごちそうになりました。身体は冷えていたのですが、ストーブの側で暖かい豚汁、いやこれ本当に暖まりました。この準備は保護者の皆さんがしてくれていたようで、いやホントありがとうございました。


こんな感じで楽しく観望会を過ごしてきました。また機会があったらお手伝いに行きたいと思います。…が、私、よく観望会に呼んでくれる学校が多い地区と、職場が反対方向なんですよね…。なので、土日でないとなかなか参加できないのです。いやー、若い頃は平日でもかまわずどこでも行ったんですけどねぇ。