グレージング観測

ちょっと観測に出かけてきます。詳しくは後ほど。


【後日、追記】
グレージング観測って何かといいますと…

  • 月が、他の天体を隠す現象を、掩蔽(えんぺい=オッカルテーション occultation)または星食といいます(日食もこの一種と言えます)。その際、星が月の縁をかすめるように隠されるのを、接食(グレージング・オッカルテーション grazing occultation)といいます。この観測を、通称、グレージング観測と言っています。地図上に投影すると、食されるかされないかの限界線が1本の線になりますので、限界線星食とも言います。この限界線をはさんで数100mおきに観測者を配置し、恒星が隠されるのを記録して図に描くと、月縁の山の姿が浮かび上がることになります。人数が必要なので、同好会などで観測テーマとされる事がある現象です。


今夜は下弦の月の南端が、ZC1320という恒星(しし座62番星、6等星)をかすめます。時刻は03:40頃。下弦の月で午前03時過ぎなら観測チャンスです。月が高く上っていますから。でも一般的には「起きているのがつらい時間」ですよね…。せめて明日の土曜日だったら、観測後にゆっくり朝寝できたんですけどねぇ…。

下弦の月。現象後に撮影。肉眼で見た向き(上が北)にしてあります。】

この現象、先月中旬に星仲間の先輩であるOZさんから教えていただきました。天文学的にも好条件であるうえ、限界線がわが家の近所を通過するという、地理的にも好条件です。これは観測しない手はないな、久しぶりに遠征(といっても3km程度)するか、と計画していました。
とはいえ平日なので、当日は各自観測地に直行、終わってから落ち合う事になりました。ということは、終わってみないと誰が来たのかわからないという…(笑)。結局、OZさん、みゃおさん、ほくとさん、私の4名が観測に参加しました。各自、好きずきなポイントにて観測し、それぞれ観測しました。
グレージングの醍醐味といえば、恒星が複数回、消えたり出たりする事です。普通の掩蔽だと、一度消えて一度出てくるだけですが、グレージングだと月の縁の山や谷で見え隠れするわけです。なので、たとえ記録がちゃんとできなかったとしても、複数回の明滅が見られれば、気持ち的には「グレージングを見たぞ」という事になります。(ちゃんとした観測者はそうは考えないはずですが…)その視点で行くと、今回のグレージングは、「全員、観測に成功」という事になります。いや厳密には「目撃に成功」かな。


では、どかんポイントの観測レポートです。
とにかく久しぶりの「お出かけ観測」なので、いろいろ慌てました。実は、動画が撮れないかと、機材を集め始めていたのですが、とっかかりが遅くて本番に間に合いませんでした。そこで、わが家にある数多の機材から選択して出動するわけです。パッと出してパッと撤収できる機材が良いかな、と、ビクセンGP赤道儀を選択。鏡筒は、なるべく集光力のあるものを、と、15cm反射を選択。実は、「鏡筒を2本並べて、一眼デジカメで動画を撮って、もう1本は眼視で使う」方式を目指して、こちらも機材を集め始めていたのですが、仮組してみたらパーツが1個足りなくて、2本同架できませんでした…。ダメですねぇ。こういうの、2週間前にリハーサルして、1週間前にはパーツそろえなくちゃね…。
混乱は現場に着いてからも続きます。たくさんあるので箇条書きにします。

  • モータードライブの電池切れ。これ使うの金環食以来…。
  • バランスウェイト不足。金環食の後、ウェイト1個取り外したままでした…。
  • 光軸調整不良で、恒星が点にならない…。
  • テープレコーダーが見つからない…。

まぁこんな感じで、追尾は手動。クランプを中途半端にゆるめて、でもゆるめすぎるとバランスが合っていないので危険だし、非常にビミョーな加減でした。光軸に関しては、まぁどうしようもありません。倍率を低めにしてなんとか見ました。レコーダーは、コンパクトデジカメの動画モードで音声を録音。かつてのJJYがありませんので、時刻の記録は電波時計トークライナー」のオートスピーキング頼りです。
あたふたと準備しましたが、結果としては3回の潜入と出現が見られました。動画の音声からの観測データです。

 03:41:33 潜入
 03:41:45 出現
 03:41:52 潜入
 03:42:49 出現
 03:43:09 潜入
 03:44:45 出現
 03:46:12 一瞬見失う。現象かどうかは不明。

トークライナーのオートスピーキングは便利なのですが、毎分00秒にいきなり「○○時○○分です」って言います。グレージング観測用には、00秒にピピッと鳴ってから云ってくれれば良いのに…と思いました。でも一般生活ユースには必要ないでしょうね…。
実は、トークライナーと一緒に、1秒ごとの発信音をパソコンから出せるようにソフトをダウンロードして準備していました。ところが、パソコンのバッテリーが全くあてにならず、断念しました。12Vバッテリーはあるから、インバータがあれば…と、これも後の祭り。実は、買っておいたのですが、どこかに紛れ込んでしまったのでした…。やれやれ。



【4人の観測隊員たち。右から、みゃおさん、OZさん、ほくとさん、どかん。背後にピンボケの木星(笑)。】
以上、バタバタしながらも、楽しく観測できました。何より、久しぶりに出かけて観測する感覚を思い出したこと、観測後すぐに現場で情報交換できたこと、これが良かったですね。若い頃、わくわくしながら天体観測していたあの感じ、あれを久しぶりに思い出しました。久しぶりに、星空の下に帰ってきたな、と、明け方の空を見ながら、そう思いました。


ほくとさんのブログ→星空寄り道散歩道