駆け抜ける月の影

金環食まであと2日。今日はもったいないような晴天でした。今日晴れなくても、明後日晴れれば良いのに…と、たくさんの人が同じ事を考えたと思います。


さて、金環食。よく、日本列島に斜めに線を引いた「金環食帯」の地図を見かけると思います。この帯の中で金環食が見られ、外では部分食、金環にはなりません。さてこの「金環食帯」、いったいどうして細長い、こんな形なのでしょう?
実は、この「帯」型の地域は、「月の影」が駆け抜けていく地域なのです。日食は、地球から見て月が太陽を隠すわけですが、という事は、宇宙空間から見ると、「地球の上に月の影が落ちる」のが見えるわけです。(実際は形のはっきりしない、薄暗い影らしいです。)その「月の影」の軌跡を地図に書くと、「帯」状になるのです。


次の図で、地図に赤線で書かれた楕円形、これがある瞬間の「月の影」です。その瞬間、この楕円形の中では「金環食」になっているわけです。その外側は部分食。内側ほど食が深い(たくさん欠けている)部分食です。
ちなみに、「月の影」が楕円形なのは、太陽の光が斜めに照らしているからです。もしも太陽と月が天頂(頭の真上)で日食を起こしたら、円形になるのですが、そういう理想的な日食はめったにありません。(1991年メキシコくらいでしょうか…)それに、地球は平面じゃなくて球面ですので、ちょっとでも斜めになるとさらに強調されて楕円が長くなるわけです。
では、この「月の影」が日本列島を駆け抜けていく様子を、5分ごとに見てみましょう。その時刻に、東京で日食がどう見えるかを一緒に並べます。


07h20m 屋久島や種子島ではこの時間に金環真っ最中です。

楕円が長い、という事は、太陽が斜めに差している、つまり、太陽高度が低いことを意味します。

東京ではこのくらいの部分食。


07h25m 宮崎では金環の終わり頃。高知は金環になったばかり。


07h30m 大阪も名古屋も浜松も金環の最中。


東京ももう少しで金環になります。


07h35m 東京で金環のど真ん中。静岡では金環が終わった頃。


07h40m 福島の浜通りだけ、まだ金環です。


こんな風に、わずか20分ほどで日本の南岸を、おおよそ、長径400km×短径200kmの巨大な「月の影」が駆け抜けていきます。そのスピードは月の軌道運動の速度で近似され、おおよそ秒速1kmです。『たった1km?』なんて思わないでくださいね、これ、秒速ですから!えーと、秒速1km…ってことは、分速60km、時速だと3,600km(おおよそマッハ3)になるんです。こんなに早い乗り物は地上にはありません。新幹線で時速200km超、普通のジェット機で時速900km、超音速偵察機SR-71でようやく3,530kmです。


21日の朝はニュースでも全国生中継がされる事と思います。が、テレビが見られなくても、関東の人は『今、月の影は九州だな』とか、九州の人は金環が終わったら『今から影がそっちへ行くぞー』とか、そんな風に「月の影」を迎えたり、見送ったりするのも面白いんじゃないかなぁ…と思い、この更新を書いた次第です。