金星の日面通過

来年の今日、『金星の日面通過』という天文現象があります。あと1年と迫りましたので、今日はこの現象についての更新です。


水星・金星は内惑星。地球の内側を回る惑星です。内惑星の場合、地球から見てちょうど太陽と重なることがあり、この時に太陽を背景に真っ黒な小さな円に見えます。この現象を「日面通過」または「太陽面通過」(経過とも)といいます。
水星の日面通過は20世紀のうちに14回あり、そう珍しい現象でもありません。ところが金星となると珍しく、20世紀には一度も見られませんでした。その周期は243年、その間に2回起こります。面白いのは、8年間隔で2回起こった後、121.5年後に起こり、8年後に起こり、次は105.5年後に起こり、また8年後に起こります。21世紀に起こる2回の金星日面通過のうち1回目は2004年6月8日に起こりました。(その時は曇られました。)そして来年、2012年6月6日にまた起こるのです。来年を見逃すと次は2117年ですから、もう見られないことになります。



以下、金星の場合について書きます。太陽・金星・地球と一直線になる時、つまり地球から見て金星が太陽との間に入り込む時、この位置関係を「内合」と呼びます。反対に、金星・太陽・地球と並ぶとき、つまり地球から見て金星が太陽の向こう側にある時は「外合」と呼びます。


この先、長いので隠します。お暇な方だけどうぞ。


今後1年の、太陽系中心付近の惑星の動きを示します。





金星が外合。














火星が衝。






金星が内合。


さて、ちょっと考えると、金星や水星は内合の度に日面通過しているんじゃないか?と思いますが、これがなかなか起きない現象なのです。というのは、金星や水星の軌道面が、地球を基準に考えて、微妙に傾斜しているためです。(金星は3.4度、水星は7.0度)
全ての惑星は、太陽を含む(仮想の)平面上の楕円軌道を公転しています。ここで、わずかでも傾斜している平面同士が交わる点を考えることにします。すると、軌道上のわずか2点であることがわかります。惑星が地球軌道面の南側から北側に上る点を「昇交点」、北側から南側に降りる点を「降交点」と言います。この、昇交点または降交点にある時に内合を迎えた時に、日面通過が起きるのです。


参考に、最近の内合前後の金星の動きを示します。図の左右は角度にして約50度。太陽は実際の大きさの約3倍に描いています。金星の動きは1日ごと。図の上部に描画の最後の日(金星が右端にある日)が表示されています。





こんな感じで、なかなか太陽面を通過してくれないわけです。



肝心の来年6月6日の日面通過の、1時間ごとのシミュレーションです。幸いなことに、日本では最初から最後まで見ることができます。図は天球上の北を上にしてあります。











  ※ ここまでの図の作成には「Stella Navigator ver.5」(アストロアーツ)を使用しました。


さて、問題はどうやって見るか?なんですが…。
内合の時に金星の視直径は約1分。これ、理論的には肉眼で見られるギリギリの大きさです。視力1.0のランドルト環(視力検査に使うC形マーク)のすき間が約1分ですので、これが見えない方は、残念ながら肉眼ではまず無理、望遠鏡が必要という事になります。*1望遠鏡で、太陽黒点を観測するのと同様の方法で観測するわけです。
うーん、時間がない…。詳しい事は、また近くなったらブログのネタにする事にします。が、観測者として、天文普及を目指す者として、これだけは強調しておきます。

専用フィルターなしに望遠鏡で太陽を見てはいけません。絶対にいけません。失明するおそれがあります。


さて、実は…来年の5月・6月と、太陽関係で大きな天文現象が立て続けに起きます。それぞれ、「1年前更新」をするつもりだったのですが…気がついたらもう6月じゃないですか!!!…とりあえず、6月の方の金星の日面通過は1年前更新に間に合わせました。
…というわけで、もう一つのネタ。1年前更新じゃなく、11ヶ月前更新をしようかと思っていますが、もしかして10ヶ月前更新になるかもしれません。そんなふうに全然計画性のない本ブログ、ブログ主の性格をそのまんま反映していますねぇ…。



ちなみに、「1年前更新」しそびれたネタはこちらです。

2012年5月21日、日本で金環日食が見られます。
図の赤い線の内側で金環日食が見られます。3本ある真ん中の線は、日食中心線です。この線外でも食分0.9を超える、深い部分日食が見られます。

  ※ 図の作成にはemap win1.21を使用しました。

*1:個人的には、なんとか肉眼で金星の姿を確認したいと思っていますが…。