Guild F-30R(1980)

久しぶりのギター更新です。ギルドF-30R、1980年製です。

ピックガードが四角に近い形をしているのがギルド一番の特徴です。


ボディはギルド独特の「Fシェイプ」。(右上に足が写ってしまいましたが気にしないでください…)


ヘッドは昔のギルドスタイル。上が広がっているタイプです。


指板の装飾。アバロン(アワビ)とマザーオブパール(アコヤガイ、白蝶貝など)を、四角の中にV型を作るデザインに組み合わせたブロック・インレイ。


ギルドF-30R、この型番には特別の思い入れがあります。私の大好きなポール・サイモンが使っていたのと同じ型番なのです。彼は、この他にも、マーチンD-18、オベーション、ヤマハなども使っていますが、音も詞も一番好きだったサイモン&ガーファンクル時代のメインギター、それがこのギルドF-30Rなのです。ギターを弾き始めてからずっとあこがれていたギターでした。


実はこのギターを入手するまでに、ちょっとしたエピソードがあります。しかも私らしく、天文がらみです…。
就職してしばらくたち、経済的にも余裕が出てきた頃、そろそろギルドが買えるかな?と思い始めた時期がありました。ある日、お茶の水のギター屋に弦を買いに行った際、ギルドF-30Rがいくらくらいで買えるのか、おそるおそる聞いてみました。すると、なんと、F-30Rは既に製造中止とのこと…。これはガックリしました。
1981年7月31日、シベリアから樺太北太平洋にかけて皆既日食が見られました。この日食観測のために、「ソ連の船をチャーターして洋上観測する」ツアーが組まれ、これに申し込んだのです。初めての皆既日食、初めての海外旅行、と、ウキウキしていたのですが…。ドキドキしながら申し込みをし、詳しいパンフレットも来て、さぁこれからだ、という時のこと。旅行社からの一通の手紙。「本ツアーは外務省の“行政指導”により中止となりました。」…つまり、外国の船をチャーターしてのツアーはまかりならぬ、というわけです。まぁ当時はまだ米ソが対立していた時代ですから、「ソ連の船を借りる」っていうのが日本政府にとっては面白くなかったんでしょうね。そんなわけで、あえなく中止となってしまいました。
さて、日食ツアーのために払い込んだお金が戻ってきました。ちょうどその頃、当時よく読んでいた雑誌「ギターライフ」に、こんな感じのニュースが載っていました。「ギルドF-30R、限定再発売!ポール・サイモンの音がするぞ!」…うん、これはもう買うしかないな…日食ツアー催行中止は天の声だったのかもしれない…よし、買おう!
こうして、人生最大の買い物(当時)をすることになりました。実は、ポール・サイモンのF-30Rとはいろいろ違っています。限定生産ということで、高級品らしくしたかったのか、飾りが派手です。ヘッドにはギルド最高級品の証のGマーク(ポールのはチェスターフィールドという縦長のインレイ)、指板にはブロック・インレイ(ポールのはシンプルな丸いドット)などなど。できれば全く同じでシンプルなデザインの方が良かったのですけどね…。でも、せっかく限定再生産(たしか世界で200本だったと記憶しています)され、資金も手元にあるのです。それこそ「清水の舞台から飛び降りる」心境だったのを憶えています。


ギルドF-30R、ボディサイズはやや小柄ながら、意外なくらい大きな音が出て、良く鳴るギターです。入手してから既に30年近くたちますので、木も良く乾燥していて、カラッとした音が1音1音がシャープにはっきり出てくる感じ。これはフィンガーピッキングに向いていると思います。コードストロークでもガンガン鳴ってくれるので、弾いていて実に楽しいギターなのです。