今夜の一冊「ザ・ベスト・オブ・サキ1」

某ブログに刺激されて、珍しく本の話を書きます。あまり読書量は多くないのですが、最近印象に残ったこの本を紹介します。
作者はサキ(Saki)。スコットランドの小説家です。1870年にミャンマーで生まれ、1916年に第一次世界大戦で没しているサキは、欧米では、O・ヘンリーと並ぶ短編の名手と言われています。その作風は、一言で言うとブラックユーモア。幻想、残酷、皮肉、冷笑、しばしばそういった単語で表現されています。
なぜ、サキを知ったかというと、間にウィスキーがあります。2008年12月28日のど寒ブログで「トバモリー(Tobermory)」というマル島のシングルモルトを紹介しました。トバモリーとはゲール語で「メアリーの井戸」という意味で、おそらくウィスキーの仕込み水を供給している井戸なのでしょう。さて、このトバモリーという名前で検索しているうちに、同じ名前の短編小説があるとわかりました。しかも、言葉を話す猫の名前だというのです。ちょっと興味を持ち、ぜひその本を入手して、トバモリーを読みながらトバモリーを飲んでみたい、と思ったわけなのです。(しかも名前がサキですからねww)

トバモリーが収録されている短編集は間もなくわかりました。ちくま文庫「ザ・ベスト・オブ・サキ1」です。しかし絶版なのか書店にはなく、ネット上であちこち探しました。結局、アマゾンのマーケットプレイスで発見、すぐに購入しました。なんと、\300で、送料の方が高くつきましたw
さて、言葉をしゃべる猫の話です。皆さんはどんな話を想像しますか?メルヘンなロマンチックな内容?いやそこは皮肉屋のサキのこと、そんなわけはありません。詳しい話はこれから読む方がいるかもしれないので書かないことにしますが、猫がしゃべったら困る人って、かなりたくさんいますよね(謎
読み終わって(飲み終わっていないけど)あれこれと考えたのです。まず、サキは、どうして猫に「メリーの井戸」なんて名前をつけたんでしょう?トバモリーのウィスキーが好きだったから?その前に、サキはウィスキーを飲んだのかな?
1800年代半ば、ウィスキーの製造方法はすっかり確立していて、密造酒の時代も終わっていました。政府公認の蒸留所としてグレンリベットが誕生したのが1824年、ブレンデッドウィスキーの誕生が1860年、ブドウの害虫フィロキセラが流行してワインやブランデーが作れなくなりウィスキーが売れたのが1860〜1880頃ですから、サキが生まれた1870年頃には既にウィスキーは世界中で飲まれていたと思われます。スコットランド人であるサキがスコッチウィスキーを飲まなかったとは考えにくいですね。飲まないまでも作品のネタにする事は充分に考えられます。トバモリー蒸留所の創業は1798年ですし、もしかしたらサキは、このウィスキーの名前から、トバモリーという名前の猫をしゃべらせる事を考えついたのかもしれません。
猫とウィスキーは関係が深く、その昔はあちこちの蒸留所で猫が飼われていました。たくさんの大麦を貯蔵している蒸留所にとって、ネズミは大敵です。そこで猫を飼ってネズミよけにした、というわけです。記録によると、グレンタレット蒸留所にいた「タウザー」という猫は、生涯で28899匹のネズミを捕まえたとしてギネスブックにも認定されています。そんなわけですから、ウィスキーの名前を猫につけても何ら不思議はありません。さて、本当のところはどうなんでしょう?


さて、今夜はトバモリーを読み返しながらトバモリーを飲んでいます。残りのサキは、佐紀または早貴を聴きながら読みましょうかねぇw


追記
その昔、たしか少年マガジンに、サキ原作の短編を題材にしたマンガがあった記憶があります。何人かの漫画家の競作だったように記憶しています。どなたかご存じありませんか?